Archive for the ‘未分類’ Category

2017/5/20 Billboard Chart

2017-05-21

5/20付

★数々の記録とともに「I’m The One」初登場第1位

★ブルーノ・マーズ、ラジオ・ソングスで歴代1位タイ

★25週かかってやっとTOP40入り

★ロジック、新曲への思い

★電話番号のヒット曲

★91位と100位初登場で珍事発生

★カントリーで17枚目の第1位は歴代単独2位

★あめりかん☆ぱい集計オール・タイム・ランキング、今週はコラボ・アルバムが11位に初登場したこの人

 

5/20付。今週のビルボード・シングル・チャートから。

 


今週の第1位は、HOT100史上28曲目の初登場1位となったDJキャレドの「I’m The One」です。フィーチャリング・アーティストがジャスティン・ビーバー、ミーゴスのクアヴォ、チャンス・ザ・ラッパー、リル・ウェインとオールスターです。ジャスティン・ビーバーは4曲目、リル・ウェインは3曲目、DJキャレドはじめ他のアーティストは初のNo.1です。5390万ストリームスでストリーミング・ソングス初登場第1位。デジタル・セールスは171,000ダウンロードでこちらも初登場第1位。ラジオ・ソングスは33位に初登場しました。ジャスティン・ビーバーはデジタル・セールスで8曲目の第1位です。またジャスティン・ビーバーはHOT100では15年「What Do You Mean?」以来2曲目の初登場1位となりました。複数曲のHOT100初登場1位を持っているアーティストは男性ソロでは初めてです。女性では「3」(09年)、「Hold It Against Me」(11年)のブリトニー・スピアーズと、「Fantasy」、「One Sweet Day」(ともに95年)、「Honey」(97年)の史上最多の3曲を記録しているマライア・キャリーです。

 
またこの曲はR&Bヒップホップ・ソングス、ラップ・ソングス・チャートの両方でも初登場第1位でした。リル・ウェインはこちらではともに10曲目の第1位となりました。R&Bヒップホップ・ソングス・チャートの初登場第1位は史上15曲目です。DJキャレドとしてはこちらのチャートでは通算2曲目のNo.1となりました。前回は2011年にドレイク、リック・ロスとリル・ウェインをフィーチャリングした「I’m On One」が11週間1位を記録してR&Bで年間第4位の大ヒットとなりました。HOT100では最高位第10位で年間47位でした。

 

No.1ソングで5人がクレジットされたのは実は初めてで、これまでは4人が2曲ありました。2011年7/9のピットブル・フィーチャリング・ニーヨ、アフロジャック&ネイヤーの「Give Me Everything」、2001年6/2から5週連続で1位になったクリスティーナ・アギレラ、リル・キム、マイア&ピンクの「Lady Marmalade」でした。

 
HOT100通算1064曲目のNo.1ソングですが、初登場1位は今年1/28のエド・シーラン「Shape Of You」以来です。ラップ・ソングの初登場1位は2010年5/22のエミネム「Not Afraid」以来7年ぶりでした。また、タイトルに「One」が入っている1位は16曲目。最近では昨年5/21に1位になったドレイク・フィーチャリング・ウィズキッド&カイラの「One Dance」がありました。

 
クアヴォはソロでは2曲目のTOP10ヒットです。今年ドレイクのフィーチャリング・アーティストとして「Portland」(最高位9位)でTOP10に入りました。また今年「Bad And Boujee」で1位になったミーゴスのメンバーでもあります。同じ年にソロとグループの両方で1位になったのは2010年のウィル・アイ・アム以来で、3/6にブラック・アイド・ピーズの「Imma Be」でグループで1位。そしてソロでは5/15にアッシャーのフィーチャリング・アーティストとして「OMG」で1位を獲得しています。

 
お気づきの方もたくさんいらっしゃると思いますが、最近のHOT100の1位は男性アーティストが続いています。実に今週で26週連続No.1に女性アーティストの名前がありません。今回は昨年11/26、レイ・シュリマー・フィーチャリング・グッチ・メインの「Black Beatles」からスタートしてこの曲で7曲目です。最後の女性アーティストのNo.1ソングはホールジーで、11/19まで合計12週間1位だった「Closer」でした。この曲のメイン・アーティストはチェインスモーカーズです。前回の7曲連続男性アーティストでの1位は91年11/23マイケル・ボルトンの「When A Man Loves A Woman」から92年3/14ミスター・ビッグの「To Be With You」までの7曲連続でした。ビルボード記録は61年2/13ローレンス・ウェルクの「Calcutta」から12/4ジミー・ディーンの「Big Bad John」で17曲連続でした。一方女性アーティストの1位連続記録は、99年1/16ブランディの「Have You Ever?」から5/1TLCの「No Scrubs」までの5曲連続が最高でした。

 

http://item.rakuten.co.jp/americanpie/atl558305

今週の第2位は先週の1位からダウンしたブルーノ・マーズの「That’s What I Like」です。今週ラジオ・ソングス・チャートで第1位になりました。通算7曲目のNo.1ですが、これは男性ソロではアッシャーと並んで歴代1位タイとなりました。オール・アーティストでは1位がリアーナの12曲、2位がマライア・キャリーの11曲、3位が7曲でケイティ・ペリーも記録しています。R&Bソングス・チャートでは12週目の第1位を続けています。なお、ブルーノ・マーズは来年3月のオーストラリア・ニュージーランド・ツアーを発表しましたが、同じ時期にエド・シーランもオーストラリア・ニュージーランド・ツアーを発表しました。エド・シーランの「Shape Of You」は今週はHOT100では2位から5位にダウンしました。

 

今週の3位は先週の4位からルイス・フォンシ&ダディ・ヤンキー・フィーチャリング・ジャスティン・ビーバーの「Despacito」が上がりました。ジャスティン・ビーバーは今週TOP3に2曲入りました。TOP3に同一アーティスト2曲は昨年2/27、1位「Love Yourself」、3位「Sorry」を記録したジャスティン・ビーバー以来です。ジャスティン抜きのこの曲のオリジナルはラテン・ソングス・チャートで今週も1位で14週目の第1位となりました。

 
ダンス・エレクトロニック・ソングス・チャートの第1位はチェインスモーカーズ&コールドプレイの「Something Just Like This」で8週目の第1位となっております。HOT100では6位変わらずとなっていて連続TOP10入り週数は53となりました。歴代1位のケイティ・ペリーまであと16週。

 

 


http://item.rakuten.co.jp/americanpie/epic537771

今週の32位には42位からトラヴィス・スコットの「Goosebumps」が入ってきました。初登場から今週25週目でのTOP40入りです。かなりのスロー記録ですね。今年はリル・ウージー・ヴァートの「You Was Right」が26週目でTOP40に入ったということがありましたが、ビルボード記録は何週でTOP40に入ったのがスロー記録になるのでしょうね。記憶ではリエントリーして29週目にTOP40に入った2アンリミテッドの「Get Ready For This」(95年)とかリアン・ライムスの「Can’t Fight The Moonlight」(02年)とかありましたが、今度調べておきましょう。

 

 


http://item.rakuten.co.jp/americanpie/defb002667002

61位にはロジック・フィーチャリング・アレッシア・カーラ&カリッドの「1-800-273-8255」という曲が初登場しました。電話番号ですね。これは本当の電話番号で、National Suicide Prevention Hotline、アメリカ自殺予防ライフラインの電話番号です。日本を含め各国でこのようなホットラインを設けています。ロジックは「自殺はその人が抱える悩みや問題の解決策にはならない。助けになるならもっと人やサービスを使ってほしい」と歌っています。電話番号が入っているヒット曲、おもな曲は以下のとおりです。

 
* Beechwood 4-5789 / Marvelettes (62/17)
* 634-5789 (Soulsville, U.S.A.) / Wilson Pickett (66/13)
* 867-5309/Jenny / Tommy Tutone (82/4)
* Beechwood 4-5789 / Carpenters (82/74)
* 777-9311 / Time (82/88)
* 853-5937 / Squeeze (88/32)
* 1-800-273-8255 / Logic Feat. Alessia Cara & Khalid (17/61)

 

今週は実に珍しいことが起きました。91位と100位に同じアーティストが初登場しているのですが、なんとこのアーティストにとって初のHOT100入りなんです。アトランタの20歳のラッパー、プレイボーイ・カーティです。91位が「Magnolia」、100位がリル・ウージー・ヴァートをフィーチャリング・アーティストに迎えて、「Woke Up Like This」が初登場しました。最近では『アメリカン・アイドル2012』で優勝したフィリップ・フィリップスが同じことをしておりました。2012年6/9に10位に「Home」(最高位6位)、97位に「We’ve Got Tonight」が初登場して、初のHOT100入りを2曲同時で達成しています。

 

 

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5/20付。今週のビルボード・アルバム・チャートから。

 

http://item.rakuten.co.jp/americanpie/aftmb002671602

今週の第1位は初登場以来3週連続の1位となったケンドリック・ラマーの『DAMN.』です。173,000EAU、実売は57,000枚でした。

 
アルバムチャートは実売のセールスに加えて収録曲のダウンロードやストリーミング回数も加味してランキングされています。EAUは換算枚数をあらわしています。

 
今週はTOP10内に4枚が初登場しました。

 

 


http://item.rakuten.co.jp/americanpie/wb560256

第2位に初登場したのが、ロック・アルバム、オルタナティヴ・アルバム・チャートで初登場第1位のゴリラズ『Humanz』です。140,000EAU、実売は115,000枚と、6年ぶりのアルバムを多くのファンが待ち望んでいました。『Demon Days』(05年6位)、『Plastic Beach』(10年2位)以来3枚目のTOP10入りです。収録曲の「Hallelujah Money」は反ドナルド・トランプ大統領を掲げた歌ですが、今年1月に公開されたミュージック・ビデオの撮影はトランプ・タワーのエレベーターでベンジャミン・クレメンタインが歌うものとなっています。ゴリラズやアフリカの原住民、スペインのカンデラリアの儀式、スポンジボブなどがバックに映し出されています。

 

 


http://item.rakuten.co.jp/americanpie/capb002610002

第3位にはメアリー・J.ブライジの20枚目のアルバム・チャート・エントリーとなった『Strength Of A Woman』です。14枚目のTOP10入りとなりました。78,000EAU、実売は72,000枚です。カニエ・ウェスト、ミッシー・エリオット、クアヴォ(ミーゴス)、DJキャレドなどが参加しています。

 
第6位にはデジタル・セールス・オンリーのオムニバス・アルバム『Epic AF (Yellow/Pink)』が入りました。今週HOT100に1位に初登場したDJキャレドの「I’m The One」が収録されています。シリーズ2作目なんですが、前作も『Epic AF』という同じタイトルでした。こちらは2016年8月に最高位5位を記録しています。

 

 


http://item.rakuten.co.jp/americanpie/snyl541573

第10位には1933年4月29日生まれ、今年84歳のカントリーの大御所、ウィリー・ネルソンの『God’s Problem Child』が初登場しました。6枚目のTOP10入りですが、カントリー・アルバム・チャートでは初登場1位で、通算17枚目の第1位です。17枚のNo.1は歴代単独2位となりました。1位はジョージ・ストレイトの26枚です。これまでガース・ブルックス、マール・ハガードと並んでいました。また、カントリー・アルバム・チャートでは50枚目のTOP10入りで、これは歴代1位!2位が40枚でジョージ・ストレイト、ロレッタ・リン、ドリー・パートンが並んでいます。

 

2015年に発表されたアルバム『Django & Jimmie』(最高位7位、カントリー=1位)では4歳年下のマール・ハガードとのコラボ・アルバムでした。そのマール・ハガードは昨年4/6の79歳の誕生日に亡くなっています。今年の4/6にはそのマール・ハガードの追悼公演があり、キース・リチャーズとともにウィリー・ネルソンも出演していました。昨年9月には自らが主宰する『Outlaw Music Festival』が行われ、ウィリー・ネルソン自身とファミリー・バンド、ニール・ヤング、シェリル・クロウなどが参加しました。今年も7/1から7/16までこの第2回が開催されます。ファミリー・バンドの他にシェリル・クロウ、マイ・モーニング・ジャケットなどが参加しますが、7/8のデトロイトと7/9のミルウォーキー公演にはボブ・ディランも参加するとのことです。

 

 


http://item.rakuten.co.jp/americanpie/rpblb002579602

第11位にはジョン・メレンキャンプ・フィーチャリング・カーリーン・カーターの『Sad Clowns & Hillbillies』が初登場です。ジョン・メレンキャンプは19枚目のTOP40入りとなりました。そのうちTOP10に10枚、82年の『American Fool』は第1位になっています。2014年の『Plain Spoken』以来3年ぶりの新作です。今回はヴォーカル、ハープ、ギターとソングライティングでカーリーン・カーターが参加しました。カーリーン・カーターは、ジューン・カーターとカール・スミスとの娘で、ジューン・カーターはその後離婚してジョニー・キャッシュと結婚しました。

 

2012年のホラー・ミュージカル『ゴースト・ブラザース・オブ・ダークランド・カントリー』はスティーブン・キングとジョン・メレンキャンプの共同制作でエルヴィス・コステロ、クリス・クリストファーソン、シェリル・クロウなどが音楽で参加しました。カーリーン・カーターは舞台のバック・ヴォーカルで参加して、ジョン・メレンキャンプと意気投合してその後ジョン・メレンキャンプの全米ツアーにも参加しています。

 

今週のあめりかん☆ぱい集計オール・タイム・ランキングはジョン・メレンキャンプのHOT100オール・タイムTOP25ヒットです。
1. Jack & Diane (82/1)
2. Hurts So Good (82/2)
3. Wild Night (with Me’shell NdegeOcello) (94/3)
4. R. O. C. K. In The U. S. A. (A Salute To 60’s Rock) (86/2)
5. Small Town (85/6)
6. Lonely Ol’ Night (85/6)
7. Cherry Bomb (88/8)
8. Crumblin’ Down (83/9)
9. Key West Intermezzo (I Saw You First) (96/14)
10. Pink Houses (84/8)

 

11. Ain’t Even Done With The Night (81/17)
12. Paper In Fire (87/9)
13. Hand To Hold On To (83/19)
14. Authority Song (84/15)
15. Check It Out (88/14)
16. This Time (80/27)
17. I Need A Lover (79/28)
18. Just Another Day (97/46)
19. Get A Leg Up (91/14)
20. Pop Singer (89/15)
21. Rain On The Scarecrow (86/21)
22. Rumbleseat (86/28)
23. Dance Naked (94/41)
24. Human Wheels (93/48)
25. Again Tonight (92/36)

 


新旧お宝アルバム!#84「Chris Thile & Brad Mehldau」Chris Thile & Brad Mehldau (2017)

2017-05-01

2017.5.1

新旧お宝アルバム #84

Chris Thile & Brad MehldauChris Thile & Brad Mehldau (Nonesuch, 2017)

いよいよ風薫る五月到来、そして多くの皆さんが既にゴールデンウィークを楽しんでおられることでしょうね。自分はカレンダー通りの仕事ですが、今週はオフィスも静かですし、水曜日からは五連休なので存分にアウトドアに、そして音楽にゴールデンウィークを満喫しようと思っています。また先週土曜日は東京ドームのポール・マッカートニーのライヴを観に行ってその素晴らしさに感動して来たのでいつになく音楽に対するテンションが上がりっぱなし(笑)。皆さんも楽しい音楽でいっぱいのGWをお過ごし下さい。

さて今週の「新旧お宝アルバム!」は久しぶりに今年の新譜からのご紹介。今回は、以前このコラムでも2年ほど前にご紹介したプログレッシヴなブルー・グラス・バンド、パンチ・ブラザーズのリーダーでマンドリンの達人、クリス・シーリーと、こちらも気鋭のジャズ・ピアニスト、ブラッド・メルドーの二人がタッグを組んで録音した、とてもフレッシュで刺激的な自作曲と新旧の幅広い分野からのカバー曲を聴かせてくれる、今の季節にピッタリなアルバム『Chris Thile & Brad Mehldau』(2017)をご紹介します。

パンチ・ブラザーズをご紹介した時にもご説明しましたが、現在36歳のクリス・シーリーは90年代~2000年代にニッケル・クリークという、ブルーグラスをカントリー・ロック的なアプローチで再度メインストリームに引っ張り出した功労者的バンドのメイン・メンバーとして活躍、その卓越したマンドリン・プレイと、シンガーソングライターとしても優れた才能で、2012年には毎年限られた数の、各分野のトップレベルの米国人に与えられる「マッカーサー・フェロー」賞を受賞するなど、正しく今のアメリカ音楽界を代表するミュージシャンの一人です。

一方ブラッド・メルドーは現在46歳、90年代にジャズ・サックス奏者のジョシュア・レッドマン・カルテットのピアニストとして頭角を現し、早くから自らのトリオによる作品も多く発表、一方でパット・メセニーやクラシック・オペラ・シンガーのアンヌ・ソフィー・フォン・オッターエルヴィス・コステロとのコラボで有名)、ウィリー・ネルソン、アメリカーナ・ロックのジョー・ヘンリーなど、様々な分野のアーティスト達との競演でジャンルレスな活動を展開する、こちらも気鋭のピアニスト。

アルバムは全11曲(LPは1曲、フィオナ・アップルの「Fast As You Can」がボーナス・トラックで追加されてますが、これがまた素晴らしい出来です)、うちクリスの作品2曲、ブラッドの作品が1曲、二人の共作が1曲ある他は6曲(LPは7曲)が様々なジャンルから選曲によるカバー。これらのカバーが見事にこの二人の卓越したパフォーマンスで、このアルバム全体を作り上げている世界観に納まっているのが、このアルバムの素晴らしいところ。そう、まるでクリスブラッドが作り上げる映画のサントラ盤を聴いている、ブラッドのある時は繊細な、ある時はリズミックで力強いピアノと、クリスの超絶テクとこちらも繊細さを巧みに取り混ぜたマンドリン・プレイ、そしてファルセットや力強いボーカル、そしてはたまたルックス通りの甘いボーカルを操りながら、二人の世界観を完璧なものにしている、そんな感じを強く抱くアルバムなのです。

ピアノとマンドリンという一種異形の組み合わせながら、一つも違和感を感じることなく、そればかりか静謐にも思える世界観を醸し出しているのは、つまるところ二人の才能と、それをお互いに引き立てようとする、見事なコラボワークの賜物なのでしょう。この二人、2013年から一緒にツアーもやっているらしく、今回のアルバムはその一つの完成形だったのですね。

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クリスのマンドリンのストラミングとブラッドの繊細なピアノで始まる共作の「The Old Shade Tree」や、ジャズ的展開とブルーグラス展開が絶妙なインタープレイを繰り広げるブラッド作の「Tallahassee Junction」、ブラッド作で彼のピアノが全体を物憂げにコントロールする若葉の季節を思わせる「The Watcher」や、クリス作で彼の特異なパーカッシヴなマンドリン・プレイを中心にリズミカルな楽曲展開が後半クリスのマンドリンとブラッドのピアノの絶妙に息の合ったプレイでカタルシスに昇り詰めていく「Daughter Of Eve」などの自作曲も素晴らしいですが、このアルバムの魅力はやはりカバー曲。

中でもおそらく一番耳を引くのがボブ・ディランの「Don’t Think Twice, It’s All Right(くよくよするなよ)」のカバー。名盤『Freewheelin’ Bob Dylan』(1963)収録の有名曲ですが、この曲をブラッドの軽快なピアノプレイとクリスの流れるようなマンドリンで奏でながら、クリスはややディランを意識したかのような癖のあるボーカルスタイルで、しかしはつらつと生き生きとカバーしてくれてます。これはディラン・ファンのベテラン洋楽リスナーの皆さんに是非聴いて頂きたい、聴いてるだけで楽しくなるバージョンです。

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この他にも有名なジャズ・スタンダードの「I Cover The Waterfront」や16~17世紀に活躍したアイルランドのハープ奏者の作品「Tabhair dom do Lámh」といった古くからの伝統的音楽への敬意が伝わってくるカバーから、90年代のインディ系シンガーソングライター、エリオット・スミスの「Independence Day」やジョニ・ミッチェルの初期のアルバム『Song To A Seagull』(1968)からの「Marcie」、そして前述のフィオナ・アップルの「Fast As You Can」といった近年の曲のカバーでは、同時代に生きるミュージシャンとして自らの伝統的楽器(クリスは巧みなボーカル)を駆使しながら自分たちの解釈でのパフォーマンスが楽しく、この二人が明らかにジャンルの壁を完全に超越した音楽を楽しみながらやっているのが伝わってくる、そこがこのアルバムの最大の魅力なのです。

このアルバムは、クリスブラッドが共に所属するナンサッチ・レーベルの社長、ロバート・ハーウィッツ氏のアイディアで始まった企画だそうですが、元々ブラッドのファンだったというクリスと、ハーウィッツ社長に連れられてパンチ・ブラザーズのライヴを観に行ってぶっ飛んでしまった、というブラッドが、いずれも自らの楽器とジャンルの軸を持ちながら、ロック、ポップ、ジャズ、クラシック、カントリーといったあらゆる音楽に対する興味が常に高い二人であったという時点で既に、こういう素晴らしい作品の完成は約束されていたのでしょう。

アルバムのライナーノーツでハーウィッツ氏はこのように言っています。

「二人とも才能あるクリエイティブな演奏家なので、このコラボ作品の楽器演奏面が素晴らしく満足いくレベルであることは驚きに値しない。私が全く予期しなかったにもかかわらずこのレコードを聴けば明らかなのは、彼らがお互いの共演を通じて、新しい分野を露わにしてくれる演奏と歌唱の組み合わせや歌唱のスタイル、そしてインプロヴィゼーションに基づくミュージシャンシップの関係性を根本から再定義する方法を見つけ出していることだ。それはもはやジャズでもポップでもフォークやブルーグラスでもない、『クリスブラッドの音楽』という伝統とでも言うべきものだ」

若葉の季節、素晴らしい季節のこの時期にぴったりの、この二人の才能溢れるミュージシャンが作り出す「クリスブラッドの音楽」を存分に楽しんでみてはいかがでしょうか?

<チャートデータ> ビルボード誌全米ブルーグラス・アルバムチャート 最高位1位(2017.2.18付)


新旧お宝アルバム!#83「Whatever And Ever Amen」Ben Folds Five (1997)

2017-04-24

2017.4.24

新旧お宝アルバム #83

Whatever And Ever AmenBen Folds Five (550 Music / Epic, 1997)

先週は久しぶりに一回お休みを頂いてしまったこのブログ、その間にすっかり桜も終わり先週はずっと暖かい初夏のような陽気でしたが、週末は少し涼しくなってました。でもこれからはどんどん暖かくなる一方だと思うので、アウトドアにコンサートにイベントにとアクティヴィティがどんどん増える季節、音楽は欠かせないですよね。自分も先週ノラ・ジョーンズの素晴らしいライヴに行くことができ、今週はポール卿のドームライヴも含め二つライヴに出かける予定にしてます。皆さんも洋楽ライフ、いい季節に存分に楽しんで下さい。

さて今週は前回に引き続いて90年代の作品です。とかくこの時代は若いリスナーとベテランリスナーの時代の狭間のブラックホールのようなデケイドで、超有名なミュージシャンは別として、地味ながら素晴らしい作品がジャンルを問わず多いにもかかわらず取り上げられることが少ないなあ、と思っていたら先日ミュージック・マガジンさんが4月号で「90年代のUKアルバム・ベスト100」という企画でとりあえずUKにはスポットを当ててくれてちょっと嬉しかったものです。次回は是非USや非英米系の90年代の作品を是非取り上げて頂きたいな、と密かに思う今日この頃。そこで今週はそんなUSの90年代のインディー・ポップを代表する作品の一つだと思う、ベン・フォールズ・ファイヴのメジャーデビュー作『Whatever And Ever Amen』(1997)を取り上げます。

このブログをチェック頂けている方であれば「ベン・フォールズならとっくに知ってるよ」という方も多いだろうとは思いましたが、やはりこの季節になるとこのびっくりするほどのポップ・センス満載で、かつウィットや皮肉に富んだランディ・ニューマンあたりの系譜を継いだような歌詞を、ベン・フォールズのピアノをメインにした楽曲で聴かせてくれるこのギターレス・バンドのアルバムを聴きたくなります。

ノース・キャロライナ州はチャペルヒル出身のベンを中心とした、ロバート・スレッジ(ベース)とダーレン・ジェシー(ドラムス)からなるスリーピース・バンドのベン・フォールズ・ファイヴは、インディー・レーベルからのファースト・アルバム『Ben Folds Five』(1995)でデビュー。当時USの音楽シーンは90年代初頭に大きくブレイクしたグランジ・ブームが終焉に向かう一方、数々のオルタナ・ロック・バンドと言われるアーティスト達が多様な音楽性を糧に新しいロックを模索して数々の作品を世に問うていた時代。そんな中で、まずギターを使わずピアノ中心のバンドで充分にロックしながら、ティンパン・アレー・スタイルの楽曲やトッド・ラングレンを想起させるようなパワーポップな楽曲にウィット満点の歌詞を乗せた楽曲を聴かせる彼らのサウンドはとてもユニークなものでした。

そのファーストでシーンの注目を集めた彼らはメジャーレーベルと契約、満を持してリリースしたのがこの『Whatever And Ever Amen』。メジャーデビューなのに売る気あるのかしら、と思うような地味なジャケのこのアルバム、いやいやどうしてファーストのポップながらひりりとする歌詞の楽曲は更にパワーアップしていて、聴く者の耳を冒頭から鷲づかみにします。

冒頭は「One Angry Dwarf And 200 Solemn Faces」。「一人の怒れるこびとと200人のしかつめらしい顔」というタイトルも彼ららしいウィット満点のタイトルですが、弾むようなアップテンポでリズミックなベンのピアノで一気呵成にポップなメロディで聴かせるこの曲で一気に盛り上がれます。歌詞は、高校生の頃クラスメートにいじめられたこびとの主人公がその後成功して大金持ちになって、昔いじめたクラスメート達を罵る(「Kiss my ass, goodbye」という歌詞が思わずにやり、とさせてくれます)というこれまた彼ららしいアイディアの楽曲。

続く「Fair」はミディアムテンポながらここでもベンのピアノがとてもリズミック。途中のコーラスは1960年代のミュージカル映画にでも出てきそうなグッド・タイミーなポップセンス満載で聴いているとウキウキします。

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Brick」はこのアルバムからの最初のシングルで当時結構大きなエアプレイヒットになり、BF5のメジャー・ブレイクの起爆剤となった曲。静かなピアノのイントロから徐々にドラマチックに盛り上げていって、クライマックスでのベンのファルセット・ボーカルが聴いた、楽曲としてはティンパン・アレー・マナー満点の美しいメロディのポップ作品。しかし歌詞の内容は、彼女を妊娠させてしまった主人公が彼女に堕胎させて、その後それを隠しておくのが苦しくなったので彼女の両親に打ち明ける、というなかなかヘヴィなもの。彼自身の高校時代の経験が題材だというこの曲、内容とメロディの美しさとのギャップが、ベン・フォールズというアーティストの魅力の端的なところを象徴しています。

歌詞の面白さでいえばこのアルバムで一二を争うのが次の「Song For The Dumped(捨てられた男の唄)」。やけっぱちに聞こえるベンのカウントで始まり、終始ピアノとドラムのリズミックなリフが結構ドタバタしながら変にポップに聴かせるこの曲、このアルバムで唯一ギターがフィーチャーされている曲ですが、歌詞はこんな感じです。

「そうか、君はちょっと僕らの付き合いを一休みしたいと。

ちょっとペースを落として自分のスペースを持ちたいって?

ふざけんなこのやろう。

俺の金を返せ

俺の金を返せ、このbitch

今まで使った金を返せってんだ

そして俺の黒いTシャツを返すのも忘れんなよ

お前にディナーなんてご馳走するんじゃなかった

こうやってお前の家の前で俺をぼろ切れみたいに捨て去る直前にさ

俺の金を返せ

俺の金を返せ、このbitch

今まで使った金を返せってんだ

そして俺の黒いTシャツを返すのも忘れんなよ」

どうです、笑えるでしょう(笑)。多分史上最も正直で直裁的な別れの歌だと思います、これ。

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とまあ、曲ごとに解説していくときりがないのですが、この他にもジャズっぽいピアノが素敵な「Selfless, Cold And Composed」、トッド・ラングレン的ポップ・センス再登場の「Kate」、ちょっとヨーロッパ風のアコーディオンが気分の「Smoke」、エリック・カルメンのようなクラシック・センスのピアノが美しいのに、終日泣き叫ぶ病気の妻が寝てる間にタバコで家を火事にしないかと悩むという歌詞の「Cigarette」、何にも興味ないふりをしてクールさを装う彼女を痛烈に皮肉る「Battle Of Who Could Care Less」などなど、思い切り楽しいポップ・センスと思わずニヤリとしてしまう歌詞満載の楽曲のオンパレードで一気に聴いてしまいます。

なお、最後の美しいメロディの「Evaporated」が終わってしばらくすると「ほらここに君のための隠しトラックがあるよ~聞いて聞いて、ベン・フォールズ・ファイヴはとんでもない馬鹿野郎さ!(Ben Folds Five is a f**king a**hole!)」という声が聞こえて、まあ最後まで笑わせてくれます。

彼らはこの後よりジャズっぽい方向性の『The Unauthorized Biography Of Reinhold Messner』(1999)をリリースしましたが、アルバムサポートのためのツアー終了後にバンドは一旦解散。ベンは解散後も『Rockin’ The Suburbs』(2001)、『Songs For Silverman』(2005)などクオリティの高いソロ作品をコンスタントにリリースして、シーンでの存在感をキープしていました。その後2012年にニューヨーク州北部で開催のマウンテン・ジャム・フェスティバルへのライヴ出演をきっかけにバンド再結成し『The Sound Of The Life Of The Mind』(2012)とライブアルバム『Live』(2013)を出しましたが、現在は活動休止状態で、ベンは再度ソロ活動に専念している模様です。

再三言っているようにとにかく楽しい、ポップ・センス満点の作品なので、やはり家にこもって聴いているよりは、外に出て太陽の光の下で聴くのが似合う作品。比較的CD屋さんなどでもよく見かけるので、お求めになりやすいこのアルバム、是非彼らのピアノ中心の素晴らしいポップな楽曲を聴きながら、時には歌詞カードを読んでベンのユニークなユーモアセンスを楽しんでみてはいかがでしょうか?

 <チャートデータ> ビルボード誌全米アルバムチャート最高位42位(1998.1.31付)


新旧お宝アルバム!#80「A Sailor’s Guide To Earth」Sturgill Simpson (2016)

2017-03-27

2017.3.27

新旧お宝アルバム #80

A Sailor’s Guide To EarthSturgill Simpson (Atlantic, 2016)

いよいよこれから春、桜本番かと思われたのにこの日曜日は冷たい雨で一気に冬に戻ったような気候。これが桜本格開花前の最後の雨でありますように。皆さんも不安定な気候で体調など崩さぬよう、洋楽ライフをお楽しみ下さい。

さて今週の「新旧お宝アルバム!」は昨年アメリカの各音楽誌でも高い評価を受けていて、先日の第59回グラミー賞でもメインの最優秀アルバム部門にノミネートされ、台風の目の一つとなり、今年のフジロック・フェスティヴァルへの来日が決まっていながら、まだまだ日本では知名度ゼロに近い、アメリカーナ・ロックのシンガーソング・ライター、スタージル・シンプソンのアルバム『A Sailor’s Guide To Earth』(2016)をご紹介します。

とかく日本においてこのルーツロックというか、アメリカーナ・ロックというジャンルは、昔の有名ロック・アーティスト(たとえばザ・バンドのメンバーとか、ディランとか、クラプトンとか、イーグルスのメンバーとか)がやる分にはラジオにも乗っかるし、レコード会社もマーケティングしやすいと見えてガンガン露出するしということで日が当たるケースが多いのですが、ことこれが新しいアーティストやそれまであまり有名でなかったアーティストの作品となると途端に日本では話題になりにくい、という構造的な問題があります。

ただ実際に音を聴いて、ライヴなどを聴くとえてして従来無名のアーティストたちによる作品がハッとするほど瑞々しかったり、無茶苦茶カッコよかったり、うーんと唸るほどミュージシャンシップが高かったりすることも多く、この点で日本の洋楽ファンは結構いいアーティストの作品に触れることなく終わってしまっていたのではないかと思っています。

ただこういう状況も徐々に改善されてきていて、例えばウィルコとかこのブログでも以前に取り上げたライアン・アダムスとかいったこうしたジャンルのアーティスト達が音楽メディアでも取り上げられることが増えて来ていて、なかなかいい傾向だな、と思っているところです。

で、スタージル・シンプソン。彼の音楽スタイルは、カントリーとブルースをバックボーンに置いたロック的アプローチのシンガーソング・ライターと言えばいいでしょうか。その男臭くて渋さ満点のボーカル・スタイルは70年代のアウトロー・カントリーシンガーである、ウェイロン・ジェニングスマール・ハガードといった大御所達を彷彿させますが、このアルバムのホーンセクションを全面的にバックアップしているダップ・キングス(昨年末惜しくも他界した黒人女性R&Bシンガー、シャロン・ジョーンズのバック・バンドでR&B・ブルースファンには有名)のアーシーでファンキーな演奏を軽々と乗りこなして歌う様はブルース・ロック・シンガーそのものです。

また、アコギの弾き語りや、ストーリー性満点の歌詞を持った楽曲を聴くと正統派のシンガーソングライターとしてもかなりのものですし、一方ニルヴァーナの有名曲「In Bloom」をオリジナルとは全く表情の異なるアレンジで、極端に音数を絞ったアコースティックで美しく、抑えたトーンでカバーするのを聴くと、シンガーとしての表現力も非常に高いものを感じます。

また、アルバム全体が自分の生まれたばかりの子供に向けて人生の歩き方を教える、といったコンセプトで楽曲構成されていることや、そこここで控えめにしかし効果的に挿入されるシンセや効果音っぽいサウンドの使い方のセンスなどはちょっとしたプログレ的なセンスも感じる、このアルバムはそんな多彩な表情を持っています。

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冒頭の「Welcome To Earth (Pollywog)」は正に70年代のプログレッシヴ・ロック作品の冒頭を思わせるドラマチックな効果音とピアノの音色で始まりますが、入ってくるボーカルがベテラン・カントリー・シンガー、といった感じのスタージルの声なのでこのアンマッチさが独特の魅力をいきなり醸し出しています。ストリングスのイントロからアコギとカモメの鳴き声のような効果音をバックにしっとりと歌われる「Breakers Roar」も、彼のボーカルがなければ例えばムーディ・ブルースの70年代の作品、と言われても違和感がない、そんなサウンド。

しかしそんなプログレっぽさは、ダップ・キングスのソウルフルなホーンでいきなりファンク・グルーヴ満点の「Keep It Between The Lines」、そしてカントリー・ロックっぽいシャッフル・リズムに乗って「♪東京、川崎、恵比寿、横須賀、横浜、新宿、渋谷、六本木、原宿~♪」(スタージルは20代の頃日本在住経験あるらしいです)と軽ーい感じで歌う「Sea Stories」でガラッとルーツ・ロック的方向に大きく舵を切ります。

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そして上述した美しいニルヴァーナのカバー「In Bloom」を経て、今度は正統派アメリカン・ブルースロック、といった雰囲気の「Brace For Impact (Live A Little)」である意味アルバムのクライマックスを迎えます。

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ハモンド・オルガンとダップ・キングスのホーンがまた聴く者を一気にアメリカーナな世界に連れ戻してくれ、スタージルの歌も味わい深い「All Around You」、エレピとウッドベースとストリングスとスタージルのボーカルだけの静かな「Oh Sarah」、そしてまたカモメの鳴き声をバックに海のコンセプトに戻って、取り憑かれたようなスワンプ・ファンクロックスタイルのアルバムの最大の問題作「Call To Arms」でドラマチックに終わりますが、息子に送る最後のそして重要なアドバイスという設定の歌詞は、スタージルの強力なメッセージで満ちています。

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「俺は兵役でシリアにもアフガニスタンにもイラクにもイランにも、そして北朝鮮にも行った

いったいどこまで行けば終わるのか教えて欲しい

毎日うずたかく積み上がる死体の山

いったいあと何人兵士を送れば気が済むのか

連中は石油のため、ヘロインのコントロールの為に息子や娘達を送り続ける

息子よ、どうか男になるためには奴らの操り人形にならなきゃなんて思うな

連中はお前の髪を切り、腕にバッジを付け、お前のアイデンティティを奪う

つべこべ言わずに列に並んで海外に行って仕事をするんだと言って

(中略)

誰も頭の上を飛ぶドローンが何してるか気にもせず

自分のスマホばっかり見て忙しい

まるで犬が食い物を求めるように俺たちのエゴも目から血が出るまで新しい情報とやらを求め続ける

連中は本質から目を背けさせるような情報を準備して俺たちはそれをフレンチフライと一緒に食ってしまう

俺たちの頭の上から爆弾が落ちてくるまで

TVは消せ ニュースも見るな 何も見るものなんてない

ただ憂鬱な話が流れてくるだけ

TVやラジオは嘘っぱちばかり

ハリウッドの映画は自分自身になれる方法を教えてくれるらしいが

そんな大嘘はどっかへ消えてしまえばいい」

自身米国海軍にも所属していた経験のあるスタージルが放つ「平和を守るために戦うという国のプロパガンダを信じて戦争なんか行くな、そうしたメッセージを垂れ流すメディアも信じるな」というメッセージは極めてパワフルなものがあります。

おそらくその芳醇な音楽性だけでなく、こうした強いメッセージもこのアルバムをグラミー賞最優秀アルバム部門にノミネートさせた大きな要因でしょう。惜しくも最優秀アルバムはアデルに譲りましたが、最優秀カントリーアルバム部門は見事受賞。最優秀アメリカーナ・アルバム部門にノミネートされた前作『Metamodern Sounds In Country Music』(2014)では逃したグラミー初受賞を果たしています(余談ですがこの前作のタイトルはレイ・チャールズのあの名盤『Modern Sounds In Country And Western Music』(1962)へのオマージュですね)。

グラミー受賞をきっかけにスタージルの名前が日本の洋楽メディアにもちょくちょく出てくるようになりました。夏のフジロックへの出演も楽しみ。実は自分のアメリカ人の上司はナッシュヴィル在住でスタージルがブレイク前から何度もライヴを観てきたらしいのですが「彼は絶対ライヴ観るべき!」と言ってますので、今年はスタージルのライヴを是非観たいと思ってます。

既に当年38歳という人生経験も重ねてきながら、豊かな音楽性とメッセージを持ったこの新しいミュージシャン、スタージル・シンプソンの作品を皆さんも是非一度お聴きになってみて下さい。

<チャートデータ> ビルボード誌全米アルバムチャート 最高位3位(2016.5.7付)

同全米カントリー・アルバムチャート 最高位1位(2016.5.7付)

同全米アメリカーナ・フォークアルバムチャート 最高位1位(2016.5.7付)

同全米ロック・アルバムチャート 最高位1位(2016.5.7付)


2016/12/31 Billboard Chart

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12/31付

★最高位2位8週以上は10曲も

★TOP10内に2曲同時初登場

★テイラー・スウィフト、記録ずくめ

★ストリーミングの威力!アルバム収録曲全部初登場

★TOP10に5回も入ったタイトルとは?

★『The Voice』優勝はあの人の息子

★飛行機内で泥酔暴力男を取り押さえたのは?

★訃報:ジョージ・マイケル、デビー・レイノルズ

★アルバムチャートTOP5に同一アーティスト2枚登場

★カントリーではTOP10に4枚が同一アーティスト。過去には5枚同時も!

 

 

12/31付。今週のビルボード・シングル・チャートから。

 

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今週の第1位はレイ・シュリマー・フィーチャリング・グッチ・メインの「Black Beatles」、6週連続第1位です。ストリーミングこそ6週連続第1位でしたが、デジタル・セールスは1位から3位へダウン、ラジオ・ソングスは8位変わらずでした。

 

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第2位は通算8週目の第2位となったザ・ウィークエンドの「Starboy」です。デジタル・セールス5位、ストリーミング3位、ラジオ・ソングス4位とすべて先週の2位からダウンしました。最高位2位8週以上の曲はHOT100では10曲目です。以下の通りです。なお、この曲が1位になった場合、1位になる前に2位を8週間記録した曲は3曲目で8週間2位はその最長記録です。

 

ここでは最高位2位=8週以上の曲をご紹介します。カッコ内は初登場した年です。

 
10週:
* Work It / Missy “Misdemeanor” Elliott (2002)
* Waiting For A Girl Like You / Foreigner (1981)

 

9週:
* I Love You Always Forever / Donna Lewis (1996)
* You’re Still The One / Shania Twain (1998)

 

8週:
* If I Ever Fall In Love / Shai (1992)
* Nobody’s Supposed To Be Here / Deborah Cox (1998)
* Back At One / Brian McKnight (1999)
* I Don’t Wanna Know / Mario Winans Featuring P. Diddy & Enya (2004)
* Thinking Out Loud / Ed Sheeran (2014)
* Starboy / The Weekend (2016)

 

今週は6位と7位がともにいきなり初登場した曲が並びました。TOP10内初登場2曲以上は19回目で、そのうち3曲初登場がこれまで2回ありました。

 

まず、第6位に初登場したのが、「I Don’t Wanna Live Forever (Fifty Shades Darker)」、ゼイン/テイラー・スウィフトです。2015年公開の映画『Fifty Shades Of Grey』の続編『Fifty Shades Darker』からの曲です。映画は来年2/10全米公開になります。この曲でテイラー・スウィフトは13曲目のTOP10内初登場を記録。これはダントツの歴代1位曲数です。また20曲目のTOP10ヒットとなりました。TOP10=20曲はシカゴ、シュープリームスと並んで歴代14位タイです。さらにこの曲は188,000ダウンロードを記録してデジタル・セールスで初登場第1位でした。テイラーにとっては11曲目の第1位で、リアーナの14曲に次ぎ、ケイティ・ペリーと並んで歴代2位タイです。ラジオ・ソングスでは26位に初登場。

 

さらにテイラー・スウィフトはこの曲で70曲目のHOT100エントリーを果たしました。女性アーティストではアレサ・フランクリンの73曲に次いでニッキー・ミナージュと並んで歴代2位タイ。オール・アーティストでは歴代12位タイなんですが、それでは歴代11位の71曲のエントリーを記録しているアーティストは誰でしょう。テイラー・スウィフトもニッキー・ミナージュもあと1曲でこのアーティストに並びます。答はザ・ビートルズ。

 

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続いて第7位に初登場したのがアルバム『4 Your Eyez Only』が今週初登場1位を記録したJ.コールの「Deja Vu」です。初のTOP10ヒットとなりました。それにしてもヒップホップ・アーティストのストリーミング攻撃はすさまじいですね。ドレイク、ザ・ウィークエンド、そしてJ.コール。アルバム収録曲10曲すべて1000万以上のストリーミングを記録してHOT100に10曲すべて初登場しました。さらにYouTubeにアップされているアルバム未収録曲も2曲HOT100に入っていて、今週J.コールは12曲同時にHOT100にエントリーしています。

 
ところで、「Deja Vu」というタイトルの曲、これでTOP10に3回目の登場です。カバーでも同名異曲でもいいので同じタイトルがTOP10に最も登場したのは「Without You」の5回でした。以下のアーティストがヒットさせました。カッコ内は最高位を付けた年と最高位です。

 

「Deja Vu」:
* Deja Vu / J. Cole (16/7)
* Deja Vu / Beyonce Featuring Jay Z (06/4)
* Deja Vu (Uptown Baby) / Lord Tariq & Peter Gunz (98/9)

 

「Without You」:
* David Guetta Featuring Usher (11/4)
* Mariah Carey (94/3)
* Motley Crue (90/8)
* Nilsson (72/1)
* Johnny Tillotson (61/7)

 
ちなみにTOP10に4回登場したタイトルは次の通りです。アーティストわかりますか?
「Angel」、「Cherish」、「Forever」、「Lady」、「My Love」、「Someday」。

 

 

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今週の59位は先週の最高位53位からダウンしたブレット・エルドリッジの「Wanna Be That Song」です。アルバム『Illinois』からのサード・シングルで今週カントリー・エアプレイ・チャートで1位になりました。通算5曲目の第1位。アルバム『Illinois』はカントリー・アルバム・チャートで昨年の10/3付で初登場第1位。1年以上前のアルバムからまだ3曲目のシングルなんですね。ヒップホップのカットのスピードとは大違いです。1年で3曲。アルバムからのファースト・シングル「Lose My Mind」、セカンド・シングルの「Drunk Your Love」もカントリー・エアプレイ・チャートでそれぞれ第1位、第2位とヒットしました。ブレット・エルドリッジによりますと、この「Wanna Be That Song」が一番好きな曲で是非シングル・カットしてほしかったそうです。

 
NBC-TVの人気オーディション番組『The Voice』シーズン11が12/13に終わり、優勝者が決まりました。今回はテキサス州出身のサンダンス・ヘッドが優勝。チームはブレイク・シェルトンのチームでした。12/13のパフォーマンスで歌った「Darlin’ Don’t Go」が6万ダウンロードを記録してカントリー・ソングス・チャートで4位、HOT100では67位に初登場しました。サンダンス・ヘッドのオリジナル・ソングで彼の妻に捧げた曲とのことです。ステージでは他にエタ・ジェームスのヒットで知られる「At Last」を歌ってこちらもカントリーで11位、HOT100では89位に初登場しました。また「Treat Her Right」も歌ってカントリー・ソングス・チャートの24位に初登場しています。こちらはロイ・ヘッドの65年最高位2位の大ヒット曲。ちなみに、サンダンスさん、このロイさんの息子さんです。

 

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12/20に大韓航空機内でちょっとした事件が発生しました。ベトナム・ハノイ発ソウル仁川空港行きの旅客機のビジネス・クラス内で、泥酔状態の韓国人の男が、隣に座っていた乗客に暴行を働いたり、女性客室乗務員をスタンガンで脅したり蹴ったりして暴れたそうです。それを他の乗客や乗務員がその男をロープで縛り付け取り押さえたそうなのですが、それに協力したのがベトナムでのコンサートを終えて韓国に向かっていたリチャード・マークス!ということでビルボードが発表したリチャード・マークスのオールタイムTOP10ヒットをご紹介します。

 

1. Right Here Waiting (89/1)
2. Hold On to the Nights (88/1)
3. Endless Summer Nights (88/2)
4. Satisfied (89/1)
5. Should’ve Known Better (87/3)
6. Don’t Mean Nothing (87/3)
7. Now and Forever (94/7)
8. Angelia (89/4)
9. Hazard (92/9)
10. Children of the Night (90/13)

 

 

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★訃報です。ジョージ・マイケルが12/25、イギリス・オックスフォードシャー州の自宅のベッドに横たわったまま亡くなっているのを発見されたとのことです。事件性はないとのことですが死因は心不全と発表されました。90年代初めに母親を亡くし、その数年後に長年の恋人をエイズ関連の病気で失ったことで12年間にわたって重いうつ病に苦しんでいたそうです。また最近は以前の面影もないほど激太りしていたとも報道されています。また一方で多くの慈善活動も明らかになっているようです。85年には「Careless Whisper」が第1位、「Wake Me Up Before You Go-Go」が第3位と年間HOT100のTOP3に2曲を送り込む大ヒットを記録。さらに、88年にはアルバム『Faith』、シングル「Faith」が同時に年間第1位となるなど80年代から90年代にかけて一世を風靡したスーパースターです。53歳。なんで...。ご冥福をお祈りします。まだアメリカで大ヒットする前に「Club Tropicana」を初めてTVで見た時からけっこうファンでした。HOT100チャートでのオールタイムTOP20は以下の通りです。

 
1. Faith / George Michael (87/1)
2. Careless Whisper / Wham! Featuring George Michael (85/1)
3. One More Try / George Michael (88/1)
4. Wake Me Up Before You Go-Go / Wham! (84/1)
5. Everything She Wants / Wham! (85/1)
6. Father Figure / George Michael (88/1)
7. I Knew You Were Waiting (For Me) / Aretha Franklin & George Michael (87/1)
8. Monkey / George Michael (88/1)
9. I Want Your Sex / George Michael (87/2)
10. Praying For Time / George Michael (90/1)

 

11. I’m Your Man / Wham! (86/3)
12. Freedom / Wham! (85/3)
13. Don’t Let the Sun Go Down On Me / George Michael/Elton John (92/1)
14. A Different Corner / George Michael (86/7)
15. Kissing a Fool / George Michael (88/5)
16. Freedom / George Michael (90/8)
17. Heaven Help Me / Deon Estus with George Michael (89/5)
18. The Edge of Heaven / Wham! (86/10)
19. Fastlove / George Michael (96/8)
20. Too Funky / George Michael (92/10)

 
★このメルマガを出そうとしたところ、もう1人訃報が舞い込んできました。デビー・レイノルズです。亡くなられた娘のキャリー・フィッシャーの葬儀の相談をしていた時に倒れ、娘が亡くなった翌日の12/28に亡くなってしまったとのことです。ショックだったのでしょうね。84歳でした。ご冥福をお祈りします。

 
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12/31付。今週のビルボード・アルバム・チャートから。

 

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今週の第1位は初登場で、ドレイク『Views』、ビヨンセ『Lemonade』に続いて今年3番目のファースト・ウィーク・セールスを記録したJ.コールの『4 Your Eyez Only』です。492,000EAU、実売は363,000枚でした。本名ジャーメイン・ラマー・コール。1985年1月28日西ドイツ・フランクフルト生まれ。彼が生後まだ8ヶ月の時に家族でノース・カロライナ州ファイエットヴィルへ移住しました。10代半ばからラッパーとして活動し、23歳の時にジェイZが設立したレーベル、Roc Nation の第1弾アーティストとして契約しました。2011年にデビュー・アルバムをリリースしました。デビュー・アルバム『Cole World: The Sideline Story』は発売第1週に217,000枚のセールスを記録してデビュー・アルバムながら初登場第1位。2013年のセカンド・アルバム『Born Sinner』は297,000枚のセールスで連続初登場第1位。サード・アルバム『Forest Hills Drive』はさらにセールスが上がって354,000枚で初登場第1位。そして今回実売で363,000枚で初登場第1位と、デビューからスタジオ・アルバムが4枚連続初登場第1位、しかも発売第1週のセールスがアルバムを出す度に上がっています。このような発売第1週のセールスがデビュー・アルバムからスタジオ・アルバムを出す度に上がっていく例は珍しく、3枚連続で継続中なのがアデルとブルーノ・マーズ。5枚連続で継続中なのがテイラー・スウィフトとなっています。

 
アルバムチャートは実売のセールスに加えて収録曲のダウンロードやストリーミング回数も加味してランキングされています。EAUは換算枚数をあらわしています。

 

今週のTOP10内初登場はあと1枚あります。

 

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第6位に初登場したのが、1995年7月4日ニュー・ヨーク州シラキュース生まれの21歳、ポスト・マローンです。今年の初めにはジャスティン・ビーバーの『Purpose World Tour』でオープニング・アクトを務めました。今回の『Stoney』はデビュー・アルバムです。58,000EAUのセールスですが、実売はわずか19,000枚。それでも第6位に入ったのは1週間でのアルバム・トラックスの合計ストリーミング数が5170万ストリームスを記録したためです。これがアルバム・セールスで34,000枚に換算されて第6位での初登場となりました。

 

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他には第2位にペンタトニックスの今年のクリスマス・アルバム『A Pentatonix Christmas』が3位から再び2位に上昇して最高位を付けています。また5位には8位からアップして一昨年のペンタトニックスのクリスマス・アルバム『That’s Christmas To Me』が入りました。こちらも最高位は第2位です。TOP5に同じアーティストのアルバムが2枚!これは今年プリンスやデヴィッド・ボウイ、2012年にはホイットニー・ヒューストンが亡くなった後の週で記録しました。亡くなった後の週で記録した例を除くと、2012年3月3日付でアデルが記録しています。この時はグラミー賞で『21』が受賞してこちらが1位、そしてその前のアルバム『19』が9位から4位にアップしてTOP5に同時に2枚入りました。

 

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今週の13位にはガース・ブルックスの『The Ultimate Collection』が初登場です。カントリー・アルバム・チャートでは第1位に初登場しました。このアルバムって、たしか4週間前に13万枚以上も売ったのにチャートに入れなかったあのアルバムです。あれから4週間たっての初登場。どうしたのでしょう。ビルボードのエントリー・ルールのためです。このアルバムは10枚組のボックス・セットです。ビルボード・アルバム・チャートではCD1枚当たり3ドル49セント以下の価格の場合、発売から4週間はチャートインできないというルールがあります。そのためこのボックス・セットは35ドル以上の価格でしたらチャートに入ったのですが、価格は29ドル99セント。ちなみにターゲット限定発売です。一般の小売店では発売していません。発売4週間はチャートインできませんでしたが、今週は5週目にあたるためチャートに入ったということなんです。それにしても発売5週目でカントリーでは1位ですか。ボックス・セットにもかかわらず。今週は37,000枚のセールスだそうです。これまでに326,000セット売れているようです。ガース・ブルックスとしてはカントリー・アルバム・チャートで16枚目の第1位。1位獲得枚数ではマール・ハガード、ウィリー・ネルソンと並んで歴代2位タイです。1位はジョージ・ストレイトで26枚。ちなみに歴代5位になる15枚はティム・マックグロウでした。

 

それにしても今週のカントリー・アルバム・チャートは1位がこのボックス・セットで2位に奥さんトリーシャ・イヤウッドとの『Christmas Together』、8位に『Christmas Together/Gunslinger』。このアルバムはウォルマート限定で2枚のアルバムをセットで安く売っているものです。そして10位にニュー・アルバムの『Gunslinger』が入っています。TOP10に4枚同時エントリー。といってもボックス・セットにも『Gunslinger』が1枚入っていますし...。ともあれ、カントリー・アルバム・チャートTOP10に同一アーティストが4枚同時は珍しいです。しかもガース・ブルックスは史上唯一の2度目の記録。前回は1993年1月16日付でした。

 

1位 The Chase
6位 No Fences
8位 Beyond The Season
9位 Ropin’ The Wind

 

この時は被っていませんね。カントリー・アルバム・チャートのビルボード記録は同一アーティストでTOP10に5枚同時チャートインだそうです。以下のとおりです。

 

エルヴィス・プレスリー:1977年10月15日付
1位 Moody Blue
5位 Pure Gold
6位 Welcome To My World
8位 Legendary Performer, Vol. 1
10位 How Great Thou Art

 

エルヴィスはこの年の8/16に亡くなっています。もう1人はこちら。

 
グレン・キャンベル:1968年10月19日付
1位 Gentle On My Mind
2位 Bobbie Gentry & Glen Campbell
4位 By the Time I Get to Phoenix
5位 A New Place in the Sun
8位 Hey, Little One

 


あのヒット曲<1060>Soul Ⅱ Soul

2016-09-12

【季節で想い出す・・・あのヒット曲】《1060》

27年前、1989年のちょうど「今頃」、

全米ヒット・チャートで、11位に上昇していたのが、

この曲でした。

 

ロンドン発!

DJ Jazzie BとNellee Hooperによる、

ソウル・プロジェクトが放ったデビュー・ヒット。

 

女性シンガー、Caron Wheelerをフィーチャーした

このナンバーは、まず本国で最高位5位を記録。

その後、アメリカ上陸を果たし、

この週の最高位11位まで昇りました。

 

さあ!↓をクリックして「あの頃」へ

Flashback!!!

 

https://www.youtube.com/watch?v=1iQl46-zIcM

 


2016/4/16 Billboard Chart

2016-04-14

★ベビーメタル速報

★ベビーメタルだけじゃない、もう1人日本人で初登場1位!

★リアーナ、マライア・ペースで1位獲得

★ポップ・ソングス・チャートで女性6人目の記録とは

★テイラー・スウィフト、マイケル・ジャクソンしか獲ったことがない賞を受賞へ

★サイモン&ガーファンクル6位初登場。なぜ?

★11枚目のダイアモンド・シングル認定

★ゼイン、さまざまな記録とともに初登場1位

★ACMアワード受賞結果

★マーゴ・プライス、史上初の記録とは

★2015年に世界で最も売れたアルバム&シングル
4/16付。今週のビルボード・シングル・チャートから。

 

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とその前に、すでにニュースでも報道されていますので、ベビーメタルの情報を。来週の4/23付でベビーメタル、アメリカではビルボード・ワールド・アルバム・チャートで初登場1位、通算3枚目のチャートインとなった『Metal Resistance』が、ポップ・チャートであるビルボード200では39位に初登場しました。日本人アーティストでは坂本九の『Sukiyaki And Other Japanese Hits』の最高位14位(63年・合計17週間チャートイン)以来のTOP40入りとなりました。UTADAもKODAもSEIKOも成し得なかった記録です。これまでワールド・アルバム・チャートではデビュー・アルバム『Babymetal』が2014年1位(ビルボード200では最高位187位)、『Live At Budokan: Red Night』が2015年3位を記録していました。

 

 

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そして、全然今のところ報道にないのですが、日本人アーティストがもう1人、4/23付でジャンルのチャートで初登場1位しているんです。アーティスト名はHIROMI。日本人ジャズ・ピアニストの上原ひろみです。ジャズ・アルバム・チャートで『Spark: The Trio Project』(アーティスト名のクレジットは、Hiromi Featuring Anthony Jackson & Simon Phillips です。)が初登場1位に輝きました。HIROMIはジャズ・アルバム・チャートでは2013年に『Move』が2013年最高位8位、そして『Alive: The Trio Project』が2014年最高位3位でした。そしてこのアルバムが初登場1位と3枚連続3枚目のTOP10入りと人気上昇中です。なお、このアルバムはビルボード200では200位圏外でした。

 

 

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さて、HOT100チャートです。今週4/16付の第1位はリアーナ・フィーチャリング・ドレイクの「Work」で7週連続第1位となりました。R&Bヒップホップ・ソングス・チャートでは9週目の第1位です。ストリーミング、今週も強いです。3000万は割りましたが、2880万ストリームスでストリーミング・ソングス・チャートで7週連続第1位です。ラジオ・ソングスは3位から2位へアップ。一方デジタル・セールスでは4位かラ5位へダウンしました。リアーナの1位通算獲得週数は58週。歴代2位のビートルズまであと1週。1位のマライア・キャリーまであと21週となりました。マライアが79週目の第1位を記録した時は38歳でした。リアーナは現在28歳。マライアは28歳からの10年間で5曲の1位を記録しました。この5曲で21週間の1位週数なんです。ということは、現在のリアーナ58週は、マライア28歳時と同じ週数なんですね。マライアはその当時1位は13曲でした。リアーナは14曲。初の1位はマライアは20歳。リアーナは18歳でした。ほぼ同じペースなんですね。リアーナ、1位曲数も週数も歴代1位の可能性、十分あります。

 

今週のジャスティン・ビーバー。「Love Yourself」は今週3位から5位にダウン。でもこれでTOP10内初登場以来連続20週チャートインとなり、4曲あるビルボード記録にあと1週となりました。この4曲のうち2曲がジャスティンの最新アルバム『Purpose』に収録されている「What Do You Mean?」と「Sorry」です。

 

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5/20にアルバム『7/27』が発売になるガール・グループ、フィフス・ハーモニーですがタイ・ダラー・サインをフィーチャリングした「Work From Home」が12位から10位にアップ、初のTOP10ヒットとなりました。ガール・グループのTOP10入りはなんと8年もなかったんですね。プッシーキャット・ドールズの「When I Grow Up」(2008年最高位9位)以来とのことです。
先週詳しいリストを載せましたが、アデルの「Hello」が今週もアダルト・コンテンポラリー・チャートで1位となりこれで通算20週目の第1位となりました。このチャートで20週間の第1位は歴代5位タイ。最長1位は28週間でアンクル・クラッカー・フィーチャリング・ドビー・グレイの「Drift Away」(2003年)です。ちなみにこの曲のオリジナルであるドビー・グレイの「Drift Away」はACチャートでは73年最高位12位でした。アデルの「Hello」はHOT100では今週19位。アルバム『25』は初登場以来連続19週目のTOP5(今週5位)で全米では860万枚のセールスを記録しています。

 

 

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17位にはセレーナ・ゴメスの「Hands To Myself」(最高位7位)が15位からダウン。でも今週ポップ・ソングス・チャートで1位になりました。アルバム『Revival』から3曲目の第1位です。このチャートで1枚のアルバムから3曲の1位は女性では6人目とのことです。以下の通りです。チャートは2008年7月5日にスタートしました。
* Alanis Morissette / Jagged Little Pill:(3曲)
“Ironic,” “You Learn,” “Head Over Feet” (1996)

 

* Avril Lavigne / Let Go:(3曲)
“Complicated,” “Sk8er Boi,” “I’m With You” (2002-03)

 

* Lady Gaga / The Fame:(4曲)
“Just Dance” (featuring Colby O’Donis), “Poker Face,” “LoveGame,” “Paparazzi” (2009)

 

* Katy Perry / Teenage Dream:(6曲)
“California Gurls” (featuring Snoop Dogg), “Teenage Dream,” “Firework,” “E.T.” (featuring Kanye West), “Last Friday Night (T.G.I.F.),” “The One That Got Away” (2010-12)

 

* Taylor Swift / 1989:(5曲)
“Shake It Off,” “Blank Space,” “Style,” “Bad Blood” (featuring Kendrick Lamar), “Wildest Dreams” (2014-15)

 

* Selena Gomez / Revival:(3曲)
“Good for You” (featuring A$AP Rocky), “Same Old Love,” “Hands to Myself” (2015-16)
ところで上のリストにもあるテイラー・スウィフトですが、第64回BMIポップ・アワードで特別表彰されることになりました。この賞はソングライターに対する賞で、このたび史上2人目となるそのアーティスト名の賞を受賞することになりました。賞の名前は『Taylor Swift Award』。なお、このようなケースで最初に受賞したのは1990年のマイケル・ジャクソンでした。また、バリー・マン&シンシア・ワイルには『BMI Icon Award』が贈られます。授賞式はカリフォルニア州ビバリー・ヒルズのビバリー・ウィルシャー・ホテルで5/10に行われます。

 

 

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今週の51位には69位からアップしたディスターブドの「The Sound Of Silence」が入っています。HOT100登場6週目ですが、メインストリーム・ロック・チャートでは5週連続第1位、ロック・ソングス・チャートでは3位に上がってきました。もちろんサイモン&ガーファンクルの1966年第1位になった名曲のカバーです。そして今週異変が!ロック・ソングス・チャートは2009年にスタートしたのですが、こちらにサイモン&ガーファンクルのオリジナル・バージョンが6位に初登場したのです。何故?HOT100には初登場していませんが、いったいどうしたのかといいますと、YouTubeで『Batman V Superman – Sad Affleck』というのがありまして、『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』公開直前にバットマン役のベン・アフレックのインタビューが加工されてアップされているのですが、その表情が悲しげで、そのバックにこのサイモン&ガーファンクルの「The Sound Of Silence」が流れているのです。ストリーミングで510万回の再生で初登場6位とのことでした。

 

RIAA(アメリカ・レコード協会)がアルバムやシングルのセールスを発表しているのですが、この度11枚目の1000万枚以上セールスを記録したシングルが認定されました。フロリダ・ジョージア・ラインの「Cruise」です。「Cruise」といえば、カントリー・ソングス・チャートで2013年に24週間第1位を記録して、このチャートでの1位最長記録を更新する大ヒットとなりました。この曲が4/1に1000万枚のセールスの認定を受けました。RIAAで1000万枚のセールスはアルバムでもシングルでも『Diamond Award』として記録されます。これまでの経緯をみますと、7インチ・アナログ・シングルの時代には認定がなく、CDシングル時代にエルトン・ジョンが、ダウンロードの時代になって9枚が認定されました。さらに現在はストリーミング数も換算されてセールスに加えられての認定となっています。「Cruise」1000万枚認定の内訳は748万ダウンロード+1億5500万ストリームスとのことです。11枚のダイアモンド・シングルは以下の通りです。表記はRIAAに従っています。
1200万枚:
* Baby / Justin Bieber (Featuring Ludacris)

 

1100万枚:
* Candle In The Wind 1997/Something About The Way You Look Tonight / Elton John
* Love The Way You Lie / Eminem (Featuring Rihanna)
* Bad Romance / Lady Gaga

 

1000万枚:
* Not Afraid / Eminem
* Cruise / Florida Georgia Line
* Radioactive / Imagine Dragons
* Firework / Katy Perry
* Dark Horse / Katy Perry
* Poker Face / Lady Gaga
* Thrift Shop / Macklemore & Ryan Lewis (Featuring Wanz)

 

 

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4/16付。今週のビルボード・アルバム・チャートから。

 

 

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今週の第1位は元ワン・ダイレクションのゼインのソロ・デビュー・アルバム『Mind Of Mine』です。157,000EAU、実売は112,000枚でした。UK出身で男性ソロ・アーティストのデビュー・アルバムの1位は実に1988年『Faith』が1位になったジョージ・マイケル以来ですが、初登場1位は初めてとのことです。このアルバムはUKのアルバム・チャートでも当然初登場1位で、デビュー・アルバムが英米両方で初登場1位になったUK出身ソロ・アーティストは2009年『I Dreamed A Dream』が1位になったスーザン・ボイル以来です。さらにワン・ダイレクションで4枚の1位を記録していて、グループ、ソロ両方で1位になりました。このケースは結構あります。さらにさらにアルバムからのファースト・シングル「Pillowtalk」がHOT100チャートで1位を記録しています。そのアーティスト名義でのデビュー・アルバム、デビュー・シングルがそれぞれのチャートで初登場1位を記録したのは3人目だそうです。これまで以下の2人が記録していました。

 

* Lauryn Hill: 1998年
アルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』
シングル「Doo Wop (That Thing)」

 

* Clay Aiken: 2003年
アルバム『Measure of a Man』
シングル「This Is the Night」

 

アルバムチャートは実売のセールスに加えて収録曲のダウンロードやストリーミング回数も加味してランキングされています。EAUは換算枚数をあらわしています。

 

今週のTOP10内初登場はあと3枚です。

 

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第2位に初登場したのが、R&Bヒップ・ホップ・チャートではデビューから3枚連続第1位となったK.ミッシェルの『More Issues Than Vogue』です。ビルボード200では2013年のデビュー・アルバム『Rebellious Soul』が3位、2014年の『Anybody Wanna Buy A Heart』が6位でした。

 

第7位には1991年8月9日アトランタ出身のラッパー、ヤング・サグのずっと発売が延期されていた5枚目のミックス・テープ『Slime Season 3』が初登場しました。昨年「Lifestyle」がHOT100で16位を記録しています。デビュー・アルバムは『Hy!£UN35』というタイトルで今年の夏に発売予定とのことです。

 

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第9位には3枚目のTOP10入りとなったアスキング・アレキサンドリアの『The Black』が初登場しました。4枚目のスタジオ・アルバムです。そのうち3枚がTOP10入りですのでUKのみならず、アメリカでも安定した人気を獲得しています。2008年に結成されたUK出身の5人組メタルコア・バンドです。

 

 

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12位に初登場したのがブルース・ギタリスト、ジョー・ボナマッサの『Blues Of Desperation』です。1995年9月2日にスタートしたビルボード・ブルース・アルバム・チャートでは16枚目の第1位となりました。16枚の1位は2位のBBキング、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの9枚を大きく引き離して歴代1位です。27枚のアルバムすべてがこのチャートでTOP10に入っているというアメリカでは大人気アーティストなんです。

 

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ここでカントリーの話題を2つほど。
まず、4/5にラス・ヴェガス・MGM・グランド・ガーデン・アリーナで授賞式が行われた第51回ACMアワード(Academy Of Country Music Awards)の結果をご紹介します。司会はダークス・ベントリーとルーク・ブライアン。昨年のCMAアワード受賞してからポップでも人気が出てきたクリス・ステイプルトンがこちらでも最多の4部門で受賞しました。
Entertainer of the Year; Jason Aldean

 

Male Vocalist of the Year: Chris Stapleton
Female Vocalist of the Year: Miranda Lambert
Vocal Duo of the Year: Florida Georgia Line
Vocal Group of the Year: Little Big Town

 

New Male Vocalist of the Year: Chris Stapleton
New Female Vocalist of the Year: Kelsea Ballerini
New Vocal Duo or Group of the Year: Old Dominion

 

Album of the Year: Traveller / Chris Stapleton
Song of the Year: Nobody to Blame / Chris Stapleton
Single Record of the Year: Die a Happy Man / Thomas Rhett

 

Video of the Year: Mr. Misunderstood / Eric Church
Vocal Event of the Year: Smokin’ and Drinkin’ / Miranda Lambert featuring Little Big Town

 

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もうひとつは、カントリー・アルバム・チャートで10位に初登場したマーゴ・プライスの『Midwest Farmer’s Daughter』です。4000枚のセールスでビルボード200では189位に初登場しました。何でこのアルバムを話題にしたかといいますと、このアルバムは彼女のデビュー・アルバムなんですが、女性ソロ・アーティストのデビュー・アルバムが、カントリー・シングル・チャートにまだ登場していなくて、カントリー・アルバム・チャートでTOP10内に初登場したのがこのチャート54年の歴史でなんと初めてなんだそうです。惜しい記録としては、先週お伝えしたケイン・ブラウンの高校の1年後輩で、アメリカン・アイドルシーズン10の準優勝者であるローレン・アライナのデビュー・アルバム『Lauren Alaina』が、カントリー・アルバム・チャートで2011年6月11日付で9位に初登場したのですが、同じ週にカントリー・ソングス・チャートで「Like My Mother Does」が49位にランクインしていました。
マーゴ・プライスは1983年4月14日生まれ。イリノイ州バッファロー・プレイリー生まれでテネシー州ナッシュヴィル育ちの今年33歳です。伯父がジョージ・ジョーンズやコンウェイ・トゥイッティ、チャーリー・プライド、リーバ・マッキンタイアなどに曲を提供しているソングライターのボビー・フィッシャーでその影響もあっていろいろな仕事をしながらカントリー・バンドで歌ってきました。今回、遅咲きですがメジャー・デビューすることができ、彼女は夢の階段を登り始めています。

 

 

最後に、IFPI(国際レコード産業連盟)が2015年の全世界で売れたアルバム、シングルのベスト10を発表していたのでご紹介します。
Digital Singles:
1. See You Again / Wiz Khalifa Feat. Charlie Puth
2. Uptown Funk / Mark Ronson Feat. Bruno Mars
3. Thinking Out Loud / Ed Sheeran
4. Sugar / Maroon 5
5. Lean On / Major Lazer Feat. MO and DJ Snake
6. Love Me Like You Do / Ellie Goulding
7. Hello / Adele
8. Blank Space / Taylor Swift
9. Cheerleader / OMI
10. Want To Want Me / Jason Derulo

 

Global Albums:
1. 25 / Adele
2. x / Ed Sheeran
3. 1989 / Taylor Swift
4. Purpose / Justin Bieber
5. In The Lonely Hour / Sam Smith
6. Made In the A.M. / One Direction
7. Fifty Shades of Grey / Soundtrack
8. A Head Full of Dreams / Coldplay
9. Title / Meghan Trainor
10. Beauty Behind The Madness / The Weeknd

 


新旧お宝アルバム!#38「Infinite Arms」Band Of Horses (2010)

2016-04-11

2016.4.11

新旧お宝アルバム #38

Infinite ArmsBand Of Horses (Columbia, 2010)

とうとう桜もこの週末で終わってしまったようで、これからは春本番の素晴らしい季節。ボブ・ディラン、エリック・クラプトン等々海外アーティスト達のライヴも目白押しで、暖かい気候の中、音楽ライフをエンジョイされている方も多いと思います。

今週の「新旧お宝アルバム!」は「新」のアルバム紹介ということですが、6年前にリリースされたのでちょっと時間は経ってしまっているのですが、今の季節にぴったりの春らしい暖かさと詩情あふれる優れた楽曲を満載したアルバムを次々にリリース、21世紀のオルタナ・カントリー・ロック・シーンの重要な一角を占めているサウス・キャロライナをベースに活動する5人組、バンド・オブ・ホーセズが2010年にリリースした名盤『Infinite Arms』を取り上げます。

Infinite Arms (Front)

そもそもいわゆるオルタナ・カントリー・ロックといわれるジャンルがメインストリームにも認知されるようになったのは、1980年代後半アルバム『Guitar Town』(1986)でカントリー・ベースの楽曲を新たなロックへのアプローチとして提唱したスティーヴ・アールや、伝統的なカントリーの手法とハードコア・パンクのアプローチをミックスしたスタイルで新しいロック・スタイルを築いたイリノイ州出身のアンクル・テュペロらが活動しだした頃。1994年にそのアンクル・テュペロが解散、その元メンバーが結成したのが今でも活動を続けており今年のフジロック・フェスティヴァルにもやってくる今や大御所オルタナ・カントリー・ロック・グループのウィルコサン・ヴォルトでした。そのアンクル・テュペロの解散から10年後、シアトルで結成されたのがこのバンド・オブ・ホーセズ。彼らはある意味第2世代のオルタナ・カントリー・ロック・バンド、ということができます。

そのスタイルは、スティーヴ・アールがあくまでストイックなハードコア・カントリーを軸にロック的アプローチを展開していたり、ウィルコがよりパンク的なアプローチや、ノイズ系のサウンドなど実験的なアプローチで先進的な作品を発表したり(アルバム『Yankee Hotel Foxtrot』(2002)はそのアプローチでの傑作)しているのに比べて極めてオーソドックスで、ある意味70年代のイーグルスポコといったメインストリームのカントリー・ロック・バンドの意匠を明確に受け継いでいるのが特徴であり、彼らの魅力だということができるでしょう。

しかし彼らのサウンドはただ耳に気持ちよいカントリー・ロックだけではなく、90年代を通過したことが明らかな、エッジの立ったギターサウンドなども配した楽曲構成が特徴的です。あの90年代のグランジ・ブームを生み出したシアトルのレコード・レーベル、サブ・ポップからデビューしたということも彼らのこうしたサウンドを形作っている要素なのでしょう。

Band Of Horses

このアルバムのオープニングを飾るのはほとんどシアトリカルともいえるドラムロールと昔のザ・バンドあたりを思わせるノスタルジックなイントロで始まる「Factory」。この曲のドリーミーで優しい歌声とメロディは彼らの最大の魅力である楽曲の素晴らしさを最大限に発揮しています。続く「Compliments」はメロディは60年代のバーズ、ホリーズあたりを思わせるノスタルジアを漂わせながら、サウンドはよりギターのエッジを効かせたもう一つのBOHの魅力を湛えたもの。当時ロック・チャートでちょっとしたヒットになった「Laredo」も同じ路線の楽曲です。

続く「Blue Beard」「On My Way Back Home」といった楽曲も同じようにちょっとロック的なエッジが立ったアレンジですが、メロディ的にはバーズ的な肌合いの作りで聴く者の胸を弾ませてくれます。

アルバムタイトル曲の「Infinite Arms」は、後半の「Evening Kitchen」「For Annabelle」と併せて、このアルバムで最もメインストリームのカントリー・ロック、もっと言ってしまうと、以前このコラムでもファースト・アルバム『Pickin’ Up The Pieces』(1969)をご紹介したポコの影響をとても強く感じさせる、美しくも詩情的な楽曲で、ある意味このアルバムのハイライトでもあります。ここでのボーカルのベン・ブリッドウェルの歌は間違いなくポコラスティ・ヤングのあの甘くも郷愁を感じさせるボーカルをそのまま再現していて、ポコのファンにはたまらない楽曲群だと思います。もう一つ「Older」はさらにニッティ・グリッティ・ダート・バンドフライング・ブリトー・ブラザーズといった大御所の70年代カントリー・ロックの意匠を忠実に再現した曲であり、これももう一つのこのアルバムのハイライトといえます。

Inifinite Arms (Back)

このアルバムの魅力はつまるところ、60~70年代のバーズポコ、ニッティ・グリッティ・ダート・バンドなどのメインストリームのカントリー・ロックを彷彿とさせる楽曲と、90年代の新しいロックを経由してベースに蓄えられたギター・ロックをメインとしたエッジの立った楽曲が見事マリアージュされ、21世紀の今の時代に聴いても納得して楽しめるところなのです。

とにかくノスタルジックなドラムロールで始まる「Factory」から大作映画の最後のエンドロールを思わせるような、広大な荒野を映像として想起させるような楽曲「Neighbor」で終わるまで、このアルバムは捨て曲一切なし。それを確認するかのように、このアルバムはその年のグラミー賞の最優秀オルタナティヴ・アルバム部門にもノミネートされています(受賞はブラック・キーズの『Brothers』)。

彼らは今年まもなく久々の新譜発表を予定しているということですが、過去このアルバムリリース直後の2010年サマーソニックを含めて2回の来日を果たしていながらまだまだ日本のメディアではその名前が上ることが少ないバンド・オブ・ホーセズ。それにしてはこのバンドの奏でる音楽は極めて上質のものであり、今のオルタナ・カントリー・ロックの最もメインストリームに近いこのアルバムの素晴らしい楽曲たちを、日々暖かさを増す今の季節に楽しんで頂きたいと思います。

<チャートデータ>

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位 7位(2010.6.5付)

同全米ロック・アルバム・チャート 最高位2位(2010.6.5付)


2016/4/9 Billboard Chart

2016-04-08

★リアーナ、史上2曲目の快挙!さらにビートルズまであと2週!

★今週のジャスティン・ビーバー

★アデル、セリーヌ・ディオンに並ぶ

★女性アーティストでソロ、グループでアルバム1位は5人目

★友達はアメリカン・アイドル準優勝、ケイン・ブラウン、デビュー

★アルバム・チャートでの『バットマンVSスーパーマン』

★訃報:パティ・デューク、マール・ハガード
4/9付。今週のビルボード・シングル・チャートから。

 

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第1位はリアーナ・フィーチャリング・ドレイクの「Work」で6週連続第1位となりました。R&Bヒップホップ・ソングス・チャートでは8週目の第1位です。ストリーミングが強くて、3000万ストリームスを5週連続で記録してこちらのチャートでも6週連続第1位です。3000万以上を5週記録した曲というのはこれまでアデルの「Hello」しかありませんでしたので史上2曲目なんです。(ストリーミング・チャートは2013年1月からスタートしています。)デジタル・セールスは4位、ラジオ・ソングスは3位と先週と変わっておりませんでした。
これでリアーナはHOT100では14曲で通算57週目の第1位となり、歴代2位のビートルズ(1位20枚)まであと2週と迫ってきました。歴代1位は18曲で79週間1位を記録したマライア・キャリーです。ちなみに、4位は5曲で50週の1位を記録したボーイズ・トゥ・メン、5位は9曲で47週のアッシャーとなっています。なお、HOT100では通算22週間の第1位を記録しているエルヴィス・プレスリーですが、TOP100を含めると合計62週(14曲)1位を記録しています。

 

 

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第2位にはルーカス・グラハムの「7 Years」が3位からアップ。UKをはじめヨーロッパ各国に続いていよいよアメリカでも1位が見えてきました。デジタル・セールスでは1位から2位ですがストリーミングで3位から2位にアップ。ラジオ・ソングスは15位から13位にアップです。

 

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6位には2週間前に11位に初登場、先週12位にダウンしていたメーガン・トレイナーの新曲「No」がジャンプアップしました。通算4曲目のTOP10ヒットです。オフィシャル・ビデオが3/24にリリースされてストリーミングで21位に初登場。それに伴い、デジタル・セールスが5位から今週1位になりました。ラジオ・ソングスは14位から12位へアップしています。セカンド・アルバム『Thank You』は5/13リリースです。

 

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トゥエンティ・ワン・パイロッツの「Stressed Out」ですが最高位2位を付けた後もTOP5にとどまり、今週は5位にランクされています。これでTOP5は12週目。ロック・ソングス・チャートでは1/9から14週連続で第1位です。オルタナティヴ・ソングス・チャートでは昨年の11/21から今年の2/6まで12週連続で第1位を記録しました。そして今週のオルタナティヴ・ソングス・チャートでは次のシングル「Ride」が早くも1位になっています。HOT100では「Ride」は先週と変わらず96位となっています。

 

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今週のジャスティン・ビーバー。先週「Sorry」がビルボード記録に並ぶ初登場以来21週連続TOP10となりましたが、今週は...先週の8位から11位へダウン。またしても21週目でストップとなりました。初登場から21週連続TOP10はこれで4曲目です。こちらがその4曲です。

 

Sorry / Justin Bieber (2016)
What Do You Mean? / Justin Bieber (2015-16)
Sugar / Maroon 5 (2015)
Starships / Nicki Minaj (2012).
でもこの曲があります。No.1を記録した後、先週通算7週目の2位だった「Love Yourself」。今週は通算5週目の3位にいます。初登場以来TOP10にずっといるのですが、これで19週連続TOP10入り。あと2週、いやあと3週。この曲が初登場以来連続TOP10週数記録を塗り替えるでしょう。

 

この曲は2016年年間何位に入るのでしょうか。今年の年間チャート集計開始時には4週目の1位でした。アデルの「Hello」。今週は19位にダウンしていますが、アダルト・コンテンポラリー・チャート(ACチャート)では11/28に初めて1位になって以来合計19週目の第1位なんです。1/2付でシールのクリスマス・ソング「This Christmas」に1週だけ1位を明け渡したので連続ではないのですが、アデルはこのチャートで2曲目の19週間1位を記録しました。最初の19週1位は2011年に記録した「Rolling In The Deep」です。19週以上1位を2曲持っているのはアデルともう1人だけ。それは1996年に「Because You Loved Me」が19週、2002年に「A New Day Has Come」が22週1位を記録したセリーヌ・ディオンです。セリーヌ・ディオンはACチャートでは11曲で通算87週間の1位を記録していて87週は女性アーティストで歴代1位です。ちなみにアデルは4曲で54週の1位となっていて女性アーティスト歴代4位。ACチャートの1位週数記録を調べてみました。以下の通りです。
1位 28週 Drift Away / Uncle Kracker Featuring Dobie Gray (2003-04)
2位 22週 Hey, Soul Sister / Train (2010-11)
3位 21週 Breakaway / Kelly Clarkson (2005)
3位 21週 A New Day Has Come / Celine Dion (2002)
5位 20週 Just The Way You Are / Bruno Mars (2011)
6位 19週 Hello / Adele (2015-16 継続中)
6位 19週 Thinking Out Loud / Ed Sheeran (2015)
6位 19週 Somebody That I Used To Know / Gotye Featuring Kimbra (2012-13)
6位 19週 Rolling In The Deep / Adele (2011)
6位 19週 Bubbly / Colbie Caillat (2008)
6位 19週 Bad Day / Daniel Powter (2006)
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4/9付。今週のビルボード・アルバム・チャートから。

 

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今週の第1位はグウェン・ステファニーの『This Is What The Truth Feels Like』です。84,000EAUで実売は76,000枚のセールスでした。ソロとしては2004年にリリースした『Love.Angel.Music.Baby.』が翌05年に最高位5位、2006年の『The Sweet Escape』が最高位3位でそれ以来のソロ・アルバムで初の1位を獲得しました。もちろんソロ・デビュー前はノー・ダウトのリード・ヴォーカルとして大活躍。『Tragic Kingdom』は96-97年に9週間第1位となり97年年間第2位となりました。シングル盤が発売されなかった「Don’t Speak」はエアプレイ・チャートで16週間第1位となって、97年のエアプレイ年間第1位。シングルが発売されなくてもエントリーが可能となるHOT100チャートのエントリー・ルール改正のきっかけとなる大ヒットでした。

 

グウェン・ステファニーはグループとソロで両方のNo.1アルバムを記録したわけですが、女性アーティストでは5人目です。

 

ジャニス・ジョプリン/ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー
スティーヴィー・ニックス/フリートウッド・マック
ローリン・ヒル/フージーズ
ビヨンセ/デスティニーズ・チャイルド
グウェン・ステファニー/ノー・ダウト
アルバムチャートは実売のセールスに加えて収録曲のダウンロードやストリーミング回数も加味してランキングされています。EAUは換算枚数をあらわしています。

 

今週のTOP10内初登場はあと3枚です。

 

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第2位に初登場したのが、『The Voice』最新シーズンで優勝したジョーダン・スミスのデビュー・アルバム『Something Beautiful』です。『The Voice』出身アーティストではアルバム・チャートで最高順位となりました。ジョーダン・スミスはテネシー州クリーヴランドにあるリー大学の学生で22歳。『The Voice Season 9』からの「Great Is Thy Faithfullness」、「Hallelujah」、「Mary Did You Know」が3曲連続でクリスチャン・ソングス・チャートの1位を独占しました。

 

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第8位には『The Passion: New Orleans, Music From The Television Event』が初登場。FOX-TVのライブ・スペシャル番組のサウンドトラックです。ヨランダ・アダムス、トリーシャ・イヤウッド、プリンス・ロイス、クリス・ドートリー、ジェンカルロス、シールなどが参加しています。
第9位にはカントリー・シンガー、ケイン・ブラウンの『Chapter I (EP)』が初登場です。1993年10月21日ジョージア州生まれの22歳です。同じ高校の友達のローレン・アライナが『アメリカン・アイドル シーズン10』(2011年)で準優勝すると自分もとオーディションに参加します。2013年の『Xファクター』のオーディションにも参加しましたが、途中でソロではなくボーイ・バンドを勧められたため、こちらからのデビューはあきらめました。その後自らのパフォーマンスをフェイスブックに上げてこちらで人気となりRCAナッシュヴィルとの契約までたどり着きました。「Used To Love You Sober」がカントリー・ソングス・チャートで最高位15位。この曲に加えて今週3曲がカントリー・ソングス・チャートに初登場しています。

 

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25位にサウンドトラック『Batman v Superman: Dawn of Justice』が初登場。ビルボードでは過去の『Batman』と『Superman』のアルバム・チャートでの順位を特集していましたのでご紹介します。
Batman (1966年最高位112位)
Superman (79/44)
Superman II (81/133)
Superman III (83/163)
Batman (Prince Soundtrack) (89/1)
Batman (Score Soundtrack, Danny Elfman) (89/30)
Batman Returns (92/61)
Batman Forever (95/5)
Batman & Robin (97/5)
Batman Begins (05/155)
Superman Returns (06/110)
The Dark Knight (08/20)
The Dark Knight Rises (12/8)
Man of Steel (13/9)
Batman v Superman: Dawn of Justice (16/25)

 

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訃報です。パティ・デュークが3/29アイダホ州コー・ダーリンの病院で敗血症のため亡くなりました。69歳でした。パティ・デュークは1946年12月14日ニュー・ヨーク生まれ。1959年にブロードウェーの舞台『奇跡の人』でヘレン・ケラーの少女時代を演じ、さらに1962年に同名の映画で同じ役を演じてアカデミー賞で助演女優賞を受賞しました。アメリカのTVではその時代の人気アーティストをフィーチャリングした番組が放映されていますが、当時大人気のパティ・デュークも『パティ・デューク・ショー』が63年から66年まで104回放送されました。この番組でエミー賞、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされています。エミー賞は生涯8度ノミネートされ3度受賞しました。1969年の映画『ナタリーの朝』ではゴールデン・グローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞しています。歌手としても「Don’t Just Stand There」が65年最高位8位のヒットとなるなど4曲がHOT100に入りました。ご冥福をお祈りします。

 

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新旧お宝アルバム!#37「Got No Shadow」Mary Lou Lord (1998)

2016-04-04

2016.4.4

新旧お宝アルバム #37

Got No ShadowMary Lou Lord (Work, 1998)

先週からこの週末にかけては各地で桜が満開、天気は万全とはいえませんでしたが、あちこちでお花見で盛り上がった方も多いことでしょう。自分も先ほど近くの公園に足を運んで、見事な桜並木の下でプチお花見としゃれ込んで来ました。この季節になると「ああ日本人で良かったな!」と思ってしみじみしてしまいますね。

さて今週の「新旧お宝アルバム!」は「旧」のアルバムですが、今回はそんなに昔ではないのですが、そのジャンルでは既にクラシックとして語り継がれているアルバム。90年代のインディー・ロック・シーンに登場して存在感のあるシンガーソングライターとして一部に高い人気を呼んだメアリー・ルー・ロードのファースト・フル・アルバムである『Got No Shadow』をご紹介します。

Got No Shadow (Front)

メアリー・ルー・ロードはボストン郊外出身で、早くからボストンの地下鉄の構内で、このアルバムのジャケにも見られるようにアコギをミニ・アンプにつないでひたすらバスキング(路上での演奏)していた、いわば地道な演奏活動でたたき上げてきたシンガーソングライター。

90年代にはニルヴァーナがブレイクする前の故カート・コベインの彼女だったなんていう評判ばかりが先行したこともありましたが、バスキングで鍛えた演奏能力と、彼女が書くストレートなメッセージの歌詞とパワーポップ的な魅力と甘酸っぱいメロディアスさを備えた楽曲が何といっても彼女の最大の魅力。

1993年にシングル「Some Jingle Jangle Morning」(このアルバムに収録)でデビュー以来、もっぱらシングルやEPのみのリリースで着実にファンを獲得していったメアリーが、それまでのシングルや楽曲をまとめて、ソニーの子会社のWorkレーベルからリリースしたのがこのアルバム。

音楽アーティストのファースト・アルバムは往々にしてそのアーティストのベスト・ワークとなることが多いといいますが、それはその作品をリリースするまでに収録の作品が十分にこなれて、熟成して、しかもアーティストが表現したいことが一番凝縮された楽曲で構成されることが多いから。

彼女のこのデビュー作『Got No Shadow』もそういう楽曲満載です。折から90年代はロック・ルネッサンス期であり、80年代にエレクトロやシンセサイザー、MTVなどのヴィジュアル要素で思いっきり商業化に走ったロック・シーンが、60~70年代の音楽スタイルをもう一度踏まえて、各アーティストなりの新しい表現方法を模索したことにより、シーンが大いに豊潤な状況になった時期だと思います。メアリーは正にトラディショナルなアコースティックなシンガーソングライターや、パワー・ポップといったスタイルを昇華した素晴らしい作品をここで聴かせてくれています。

冒頭の「His Lamest Flame」(あいつの今の全然イケてない彼女)という曲なんか、タイトルからして大いにニヤリとする曲。この曲のタイトルはエルヴィス・プレスリーの1961年の大ヒット曲「Marie’s The Name (His Latest Flame)」(あいつの今の彼女の名前はマリー)に明らかにひっかけながら(歌詞の中で「あたしの名前はマリーじゃないし」という箇所あり)、曲はあくまでポップでストレートなアコースティック・ナンバー。

同じくアコースティックでポップな「Western Union Desperate」に続き、イントロからエレクトリック・ギターのストロークで始まる爽快なパワー・ポップ・ナンバー「Lights Are Changing」。この曲はこのアルバムリリース直前にEPでリリースされた曲で、昨年日本のTV番組「テラス・ハウス」にもフィーチャーされ、昨年10月の彼女の初来日のきっかけともなった、いかにも90年代風パワーポップ的な魅力満点の曲です。

続く「Seven Sisters」はぐっとカントリー・ポップ調のシャッフル・リズムのゆっくりとしたミディアム・ナンバー。ちょっとシェリル・クロウを思わせるようなボーカルとアメリカン・ハートランド・ロックをアコギでやってます的な曲調が印象的な「Throng Of Blowtown」、こちらも90年代一部に人気を博したNYのシンガーソングライター、フリーディ・ジョンソンの曲をカントリー・ロック調にアレンジして独特の雰囲気を作っている「The Lucky One」、1970年前後のCSN&Yとかのハード目なナンバーといった風情の中にポップさもちゃんと出している「She Had You」、そして彼女のデビューシングルで元気のいいファズギターのイントロと演奏の疾走感と彼女のキュートでポップな歌声のアンバランスが妙に気持ちいい「Some Jingle Jangle Morning」など、この時期のパワーポップ系のサウンドがお好きな方であればはまること間違いなしのナンバーが目白押しです。

アルバムの最後はシンプルなアコギの弾き語りによるワルツ・リズムのせつせつとした「Subway」。彼女の出自であるボストンの地下鉄でのバスキング時代のことを思いながら「あたしはボストン行きの地下鉄に乗る風来坊や金持ちも見てきた/あたしはそいつらのためのジミー・ロジャース*ザ・キュアーザ・フーになってあげるんだ/それがそいつらにとって意味があるのなら」と歌いながら、アルバムを締めくくります。

*20世紀初頭に活躍した伝説的カントリー・シンガー。

Got No Shadow (Back)

このアルバムはその楽曲のスタイルといい、アルバム全体の雰囲気といい、90年代のインディー・ロックというかインディー・フォークを代表する作品といっていい作品です。バックにはショーン・コルヴィンエリオット・スミスといった同じく90年代のインディー・フォーク・シーンを代表するアーティストも参加していますが、その一方、つい先頃来日していた元バーズロジャー・マッギンがギターで参加しているなど、彼女のデビュー作に対する当時のシーンの注目度を推し量ることができます。

そして彼女のこのアコギとエレクトリックを併用したフォーク的なアプローチによるパワー・ポップ、というアプローチはシャロン・ヴァン・エッテンコートニー・バーネットといった今の若いアーティスト達にも明らかに影響を与えていると言ったらうがち過ぎでしょうか。

昨年の「Lights Are Changing」の日本でのタイアップによるブレイクと来日をきっかけに、新作の『Backstreet Angels』(2015)を自主制作でリリースするなどまた活動を最近再開しているメアリー・ルー・ロード。その原点ともいえるこのアルバムを、散りゆく桜を愛でながらじっくりと味わってみてはいかがでしょうか。

<チャートデータ>

ビルボード誌ヒートシーカーズ・アルバムチャート(アルバムチャート100位以内のチャートイン経験のないアーティストのみのチャート) 最高位26位(1998)


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