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新旧お宝アルバム!#10「The Euclid Beach Band(夢のクリーヴランド)」Euclid Beach Band

time 2015/08/17

新旧お宝アルバム #11

The Euclid Beach BandEuclid Beach Band (Cleveland International/CBS, 1979)

世の中お盆ということでバケーションモードの今週、暑さは峠を越しつつあるとはいうもののまだまだ暑い毎日。「新旧お宝アルバム!」、第11回目の今回はそんな夏にある意味ぴったりの「旧」の極上ポップ・アルバム、ユークリッド・ビーチ・バンドの「The Euclid Beach Band(邦題:夢のクリーヴランド)」を取り上げます。

Euclid Beach Band Front

先週触れたブラック・ミュージック同様、AORも日本は世界的にもコアなファンが多いマーケットとして知られています。何しろあまり一般には知られない欧米AORアーティストのアルバムの日本のみCD再発も結構多く、そうした日本のみ再発CDを世界中のAORファンが求めるため、中古市場の価格が常に高止まりしているというやや不健全な状態が見られていることは、ファンならよくご存知でしょう。

今回取り上げるユークリッド・ビーチ・バンド夢のクリーヴランド」もそうした作品の一つで、2001年にソニーの洋楽秘宝館シリーズで世界初CD化されたものの、その後廃盤となっているようで、アマゾンなどで調べると目を疑うような値段がついていて、ファンの間での人気のほどを伺わせます。

そんな状況はさておき、このユークリッド・ビーチ・バンドというグループ、オハイオ州クリーヴランド出身の二人組、ピート・ヒューレット(g., vo.)とリッチ・ライシング(kbd., vo.)が1978年に結成したポップ・デュオ。彼らは以前は、70年代前半はラズベリーズを率い、1975年以降ソロで「オール・バイ・マイセルフ」(全米最高位2位)など数々のヒットを飛ばしたあのエリック・カルメンのバックバンドにいたミュージシャンでした。

この彼らの唯一のアルバム「夢のクリーヴランド」もエリックのプロデュース(曲も2曲提供)により、全編アメリカン・メインストリーム・ポップへのオマージュのようなとても良質のポップ・アルバムに仕上がっています。

今にしてみるとやや時代がかって聞こえてしまうストリングスのイントロで始まる冒頭の「Don’t Play That Song」は、TVやディスコなど、70年代当時のアメリカン・ポップ・カルチャーに対するオマージュ的な歌詞が、いかにもエリックっぽいメロディに乗って軽快に歌われます。ボーカルのピートの声質がエリックに凄く似ているのも、エリックの楽曲を彷彿とさせる一因。

続く「There’s Moon Out Tonight」はドライブイン・シアターでドラキュラ映画を見ながらポップコーン、ハイスクール・プロム(ダンスパーティ)など、こちらは60年代のアメグラ時代を思わせるこれもポップ・カルチャー趣味満点のポップ・チューン。

次もイントロからしてラズベリーズを彷彿とさせる、キャッチーなメロディの「Karen」(大滝詠一氏の曲ではありません)と、冒頭から次々に繰り出されるポップな楽曲で、メインストリームの、特に60~70年代のポップ・ファンに取ってはたまらない展開で一気に引き込んでくれます。

アルバム中盤はエリック作の甘いポップ・バラード「I Need You」でスタート。この曲は唯一シングルとしてチャートインしていますが、時代がディスコからニューウェイヴ等に移行していた中ではちょっと古臭く聞こえてしまったためか、小ヒットに留まっています。

続く「There’s No Surf In Cleveland(クリーヴランドに波はない)」は、イントロのビーチボーイズ風のコーラスや、全編を通じて使われる60年代サーフ・ロック風なサウンドなど、山下達郎氏が聴いたら喜びそうなサーフ・ロックのオマージュに徹している楽しさ。ご存知のようにクリーヴランドのあるオハイオ州は内陸州でビーチはなく、あるのはクリーヴランドが南岸に位置する五大湖のエリー湖。「水はあるけど波はないからLAの連中がやるようにビーチの女の子にボードを見せびらかすことなんかできやしない」というやや自虐的な歌詞を極上のポップメロディで聴かせ、ニヤリとさせます。

次の「End Of The World」はもう一曲のエリック作のミディアム・バラード。こちらはおそらくこのアルバムの中でメロディの完成度の高さとエリックっぽさという点では随一の名曲だと思います。

この後もナッシュヴィルのカントリー・ポップっぽい「You Make It Easy」など珠玉の楽曲がこのアルバムには満載ですが、エリックのプロデュース以外にこのアルバムをタイトなポップアルバムにしているのは、バック・ミュージシャンの豪華さ。

もちろんエリック自身も2曲でピアノに参加してますが、それ以外にも、サックスのデヴィッド・サンボーン、ドラムスのリック・マロッタ、ギターのヒュー・マクラッケンなどが随所に参加してアルバム全体を締めています。

同じクリーヴランド出身のエリック・カルメン全面バックアップという強力な楽曲サポートと一流のミュージシャンを交えた演奏が、このアルバムを今でもAORファンの間で高い人気を誇る大きな要因といっていいでしょう。

こんな素晴らしいアルバムを作りながら、残念ながらこの後グループは2作目を作ることなく1980年には解散してしまいます。

Euclid Beach Band Back

ポップ作品としては優れていても、当時のパンクやニューウェイヴに向かう音楽シーンの流れとはややずれてしまっていたこと、せっかくのいい作品がクリーヴランド中心の地域的なヒットに終わってしまったこと、所属していたクリーヴランド・インターナショナル・レーベル(あのミートローフがメインアーティスト)がレーベル経営でトラブルに会うなど、全国的なヒットにつなげるにはおそらくもう一つ運がなかったかもしれません。

残念ながらCDを入手するには困難な状況ですが、YouTubeなどでこのアルバムの楽曲を聴くことはできます。60~70年代のポップがまだポップだった頃、シンセサイザーやデジタル・サウンドがまだ影も形もなかったころの純粋なポップ・ソングの魅力を改めて楽しみたい方、是非一度このアルバムの楽曲を聴いてみてはいかがでしょうか。

<チャートデータ>

I Need You

ビルボード誌全米シングル・チャート(Hot 100) 最高位81位(1979.4.14から2週間)

オフ会映像

ひたすら・・・歌い出しがタイトル!の全米トップ40ヒットを聴く飲み会

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