ラジオ番組企画&制作&音楽全般のプロデュースの株式会社 ヤング・スタッフ

新旧お宝アルバム!#14「Salad Days」Mac DeMarco (2014)

time 2015/09/14

新旧お宝アルバム #14

Salad DaysMac DeMarco (Captured Tracks, 2014)

台風や水害や地震を経て、ようやくここ数日は秋らしい気持ちのいい天気になってきましたが、今週の「新旧お宝アルバム!」は「新」のお宝アルバムとして、昨年リリースされた、カナダのエドモントン出身で現在ニューヨークはブルックリンをベースに活動する新進シンガーソングライター、マック・ディマルコののアルバム『Salad Days』をご紹介します。

MacDemarco_SaladDays_Front

この『Salad Days』が、自主制作のダウンロードオンリーの処女作を含めてまだ3枚目のアルバムであるマーク・ディマルコ、まだまだ聞き慣れない名前だと思いますが、昨年このアルバムが米ピッチフォーク(Pitchfork)誌の選ぶBest New Musicに選ばれ、音楽各誌の2014年ベストアルバムリストの上位にランキングされるなど(New Musical Express誌2位、Rolling Stone誌9位、Pitchfork誌12位、Q誌17位など)、一部のインディ・ポップ・ファンを中心に静かに評判が広がりつつあるようで、今年1月の初来日ライブもそこそこ好評だった模様。

とにかく一度聴くと多分その後どこで聴いても「あ、マック・ディマルコだ」と判ってしまうという独特のサウンド。一般的にはギター・ポップとか、ローファイとかいう分野に整理されそうなそのサウンドは、ポヨンポヨンと微妙にチューニングがずれてそうな(実はずれてない)リヴァーヴのかかったギターリフを爪弾きながら、脱力系のボーカルで、でも独特のポップ・センスを感じる耳に残るメロディと楽曲を聴かせるという不思議なもの。

自分が一番最初にこのアルバムを聴いた時に真っ先に思い浮かんだのは、シャギー・オーティス(70年代アル・クーパーフランク・ザッパのバンドでプレイしたR&Bとロックとジャズがミックスしたような曲を書くギタリスト。ブラザーズ・ジョンソンの「Strawberry Letter #23」の作者)とベックという全く異なるタイプの、でもいずれもとてもユニークな作風とミュージシャンシップを持った二組のミュージシャンでした。この二人に共通しているのはジャンルの垣根を気にせず、グルーヴの赴くままにプレイし、質の高い作品を作るというところ。そしてマック・ディマルコもそんな感じのアーティストです。

マックのブルックリンのアパートで宅録されたという本アルバム、冒頭のアルバム・タイトル曲をはじめ収録11曲はいずれもマックのヘタウマな、リヴァーヴ・サウンド満開のギターリフと、マックのダルそうなボーカルが得も言われずゆったりとしたグルーヴを織り成して、心地よくひたれる曲がほとんど。また、彼のギターがヘタウマといっても「Blue Boy」のバッキング・ギターや、ブルースっぽい「Brother」のギターリフなんかを聴くと、決してヘタではなく、考えられた(と思われる)ギターフレーズが楽曲構成をしっかりと支えていることに気づきます。

また、メロディ・メーカーとしてもなかなかのもので、「Let Her Go」という曲などは、ブリッジ(サビ)のレイドバックした甘酸っぱいメロディなど、ただのギター・ポップじゃないぞ、と強く感じさせてくれます。

MacDeMarco_SaladDays_Back

アルバム後半は、イントロからマック得意のプヨプヨギターが炸裂する真骨頂「Goodbye Weekend」や、珍しくギターではなくアコーディオンの音色風のシンセ・リフをベースにちょっとビートルズの「サージェント・ペッパー」期を思わせるような楽曲構成の「Passing Out Pieces」、あれ?冒頭の「Salad Days」と同じ曲か?と思わせるこちらもプヨプヨギター満載の「Treat Her Better」や「Go Easy」、そして同じブルックリンを中心に活動するヴァンパイア・ウィークエンド当たりのサウンドにも通じるようなギターとリズムが印象的なインスト・ナンバー「Jonny’s Odyssey」など、レイドバックでローファイなトーンは一貫しながらも心地よく聴ける楽曲が満載のアルバムです。最後はマック自身の「やあマックだよ。聴いてくれてありがとう。またすぐ会おうな」というメッセージで完結。

メディアに出てくるマックは野球帽、ボサボサの髪の毛、グランジかよ!と突っ込まれそうなチェックのネルシャツ、前歯には隙間あり(笑)、時にはジーンズのオーバーオールなどを身につけて、およそ身なりをあまり気にしないといったキャラが明らか。ライヴなどでも下ネタジョークを飛ばしながら、仲間同士の集まりみたいなムードで演奏し、興が乗ると観客にダイヴして一緒に盛り上がる、なんてなこともやってるよう。

とにかく最初から最後まで聴くとゆったりしたグルーヴで気持ちが和む曲ばかりだし、悲しい時も、楽しい時も、ちょっと寂しい時も、そしてこれからの秋の季節に向かっては特に、いつ聴いてもいい感じのアルバムなのです。

MacDeMarco_AnotherOne

こういうゆるキャラ的な感じとは裏腹に、作品の発表ペースは結構活発で、つい先月にはさっそく新作の『Another One』(ほれ、もういっちょ!という感じが伝わってきておかしい)を発表、こちらはスタジオで録音されてよりバンド・サウンドっぽくなってますが、例のプヨプヨギターと脱力ボーカルは相変わらず(ところどころ普通のギター・ソロも弾いてますが)。良くも悪くも変わらぬ魅力を発揮しています。こちらの評判もまずまず。この『Salad Days』が気に入った方は、この新作もチェックされてはどうでしょうか。

シングルヒットは絶対出ないし、日本のFMでガンガンにかかる、なんてこともおそらくない類のアーティストですが、こういうアーティストに出会うと「ああ、ヒットもの以外もいろいろ聴いてみてて良かった」と思わせてくれる、そんな正にお宝というに相応しいアーティストであり作品ですよ、これは。

<チャートデータ>

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位30位(2014.4.19

同全米アナログ・アルバム・チャート 最高位1位(2014.4.19)

同全米ロック・アルバム・チャート 最高位11位(2014.4.19

オフ会映像

ひたすら・・・歌い出しがタイトル!の全米トップ40ヒットを聴く飲み会

Facebook