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新旧お宝アルバム!#32「The Blade」Ashley Monroe (2015)

time 2016/02/29

2016.2.29

新旧お宝アルバム #32

『The Blade』Ashley Monroe (Warner Bros., 2015)

前回のコラムの後、インフルにかかってしまったり、インフルが治ったかと思ったら仕事の関係で2週間連続週末も含めて海外出張が入ったりという状況で、この新旧お宝アルバムのアップデイトが2週間も空いてしまいました。その間にグラミー授賞式も大盛り上がりの中終了し、今週はアカデミー賞の授賞式。これが終わると授賞式ラッシュも終わって、しばらく音楽シーンは落ち着きますが、世の中は春に向かってまっしぐら。いろいろなアーティストの来日公演も予定されている中、皆さんの洋楽の春はどんな感じでしょうか?

さて、今週の「新旧お宝アルバム!」は「新」のアルバム紹介、今回は昨年ロック系の音楽誌などからも良い評価を受け、この間のグラミー賞でも最優秀カントリーアルバム部門でノミネート(残念ながら受賞はクリス・ステイプルトンに譲りましたが)されるなど、実績を積みながら中堅カントリー・アーティストへの道を着実に進んでいる当年29歳の女性シンガーソングライター、アシュリー・モンローの2枚目のアルバム『The Blade』を取り上げます。

ashley-monroe-the-blade-album-cover

アシュリーはテネシー州ノックスヴィル出身で、小さい頃からイーグルスレーナード・スキナードなどを聴いたり演奏したりする両親の影響で、11歳の頃にはタレント・コンテストでカントリーのスタンダード曲を歌って優勝するなど、早くからその才能を見せていた様子。

父親がガンで急逝後、13歳で母親とナッシュヴィルに移り住んで本格的に音楽のキャリアを目指していたアシュリーは2006年にソニーと契約、デビューアルバムを録音、シングルも2枚ほどリリースしたのですが、シングルの売れ行きが今ひとつのため、レーベルはアルバムをお蔵入りに。

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なかなか自分のアルバムデビューを果たせない中、アシュリーは以前からナッシュヴィルで知り合った今やカントリーの大御所、ミランダ・ランバートと新人のアンガリーナ・プレスリーと女3人組のカントリー・グループ、ピストル・アニーズを結成。2011年リリースのアルバム『Hell On Heels』は全米アルバムチャート5位、カントリー・アルバム・チャートは首位を獲得、当時既に実績を確立していたミランダと並んでその才能を多くのリスナーにアピールできたアシュリー、2013年には念願のソロ・デビューアルバム『Like A Rose』を、あのヴィンス・ギルのプロデュースでリリース。これがシーンで高い評価を得て、そこから2年後、今回リリースされたのがこの『The Blade』というわけ。

前作の『Like A Rose』 でもそうでしたが、今回もアルバムのほぼ全曲のソングライティングに関わっており、またどの曲も、メインストリーム・ポップとしても充分リスナーを引きつけることのできるクオリティのもので、彼女のシンガーソングライターとしての才能がいかんなく発揮されています。

前作ではまだ少女っぽさが抜けない佇まいだった容貌も、今回のアルバムジャケではビシッとメイクを決めた大人の女性のイメージを発散。

The Blade (back2)

そうしたアシュリー自身の成長を反映してか、収録された楽曲にも終わってしまった男女関係をクールに見つめる歌(「I’m Good At Leavin」)や悶々と苦しむ歌(「I Buried Your Love Alive」)、一方的な思いが報われない苦しみを歌った歌(「If Love Was Fair」)などなど、ソングライターとしても女性としても成長したことが伺われます。

そして何と言っても楽曲の魅力がこのアルバムの大きなポイント。冒頭「On To Something Good」では、過去と訣別してこれからやってくるに違いない「何かいいこと」に向かって突き進むのよ、と明るくアップビートなメロディとリズミックな歌を聴かせてくれます。「I Buried Your Love Alive」では、ロバート・プラントアリソン・クラウスの『Raising Sand』を思わせるようなちょっとレトロなカントリーR&Bナンバーに乗せて忘れられない別れた恋人への悶々とした思いを吐露します。

前作に続いて今回もプロデュースを担当、彼女のメンターの一人、ヴィンス・ギルとの共作の「Weight Of The Load」はおそらくこのアルバムでも一、二を争うポップ・アピールに溢れたカントリー・ミディアム・ナンバー。と同時に重い荷物を背負うような人生の苦しみを分かち合おう、というスピリチュアルなメッセージも持った曲です。このアルバムで唯一アシュリーがペンを取っていないアルバム・タイトル・ナンバーの「The Blade」もゆったりとした曲調とメロディも良くできた曲で、愛の終わりに相手は傷つかないけど自分だけが傷つくというシチュエーションを、相手はナイフの柄を、自分はナイフの刃を持たされてしまう、という風に表現した、いかにもカントリー・ソングらしい歌詞でドラマを作るタイプの曲です。この他にも、今話題のクリス・ステイプルトンとの共作で軽快な「Winning Streak」やナッシュヴィルあたりのラウンジでゆったりとした雰囲気で演奏されていそうな「If The Devil Don’t Want Me」など、雰囲気たっぷりな楽曲が満載です。

そしてそうした楽曲を引き立てているのが、アシュリーの澄み切った、それでいて力強いキュート・ヴォイス。メロディをフェイクする時など、なかなかえも言われない魅力を発散する歌声がこのアルバムを魅力あるものにしている大きな要素であることは間違いないでしょう。大御所ドリー・パートンの例を出すまでもなく、カントリーの世界では特徴と魅力のある歌声は大変パワフルな表現力を持ちます。彼女の場合そうした力を充分持った歌唱力を持っていると思います。

以前取り上げたケイシー・マスグレイヴス同様、カントリー界だけでなく、あのローリング・ストーン誌が選ぶ2015年のベスト・アルバム50の一枚に選ばれるなど、ロック・プレスの間にも人気と評価が高いのも彼女の特徴であり、強みです。それだけ、ジャンルに止まらない表現力とパフォーマンス・レベルの高さが認められているのだと思います。カントリーというとどうしてもスチール・ギターとフィドルがビヤ~というステレオタイプな印象があろうかと思いますが、純粋に女性シンガーソングライターの作品としてこの素敵なアルバム、体験してみてはいかがでしょうか?

<チャートデータ>

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位30位(2015.8.15付)

同全米カントリー・アルバム・チャート 最高位2位(2015.8.15付)

オフ会映像

ひたすら・・・歌い出しがタイトル!の全米トップ40ヒットを聴く飲み会

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