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新旧お宝アルバム!#53「Thriller!」Cold Blood (1973)

time 2016/08/22

2016.8.22

新旧お宝アルバム #53

Thriller!Cold Blood (Reprise / Warner Bros., 1973)

ここのところ蒸し暑い日やゲリラ豪雨の日など天候が不安定ですが皆さん体調万全でお過ごしでしょうか。折しもスポーツではリオオリンピックでの連日の日本選手の活躍や、夏の甲子園が佳境に入って来る一方、先週末はサマソニ開催でフェスで盛り上がっている方も多いのでは。いずれにしても体調に気を付けて、音楽とスポーツの夏を満喫して下さい。

さて先週お休み頂いた今週の「新旧お宝アルバム!」は「旧」のアルバムをご紹介する順番。今週ご紹介するのは、サンフランシスコ・ベイエリアから60年代後半~70年代前半に登場したファンキーR&Bグループの一つで、あのタワー・オブ・パワーと並び称された、紅一点女性ボーカルのリディア・ペンスを擁するコールド・ブラッドの4枚目のアルバム、『Thriller!』です。

Thriller (Front)

スリラー、といってももちろんマイケル・ジャクソンとは何の関係もありません。何やらセンセーショナルなタブロイド紙の記事からの写真か?と思わせるようなユニークなジャケットのアルバムですが、その内容は、ホーンセクションやグルーヴの効いたファンキーなリズムのR&Bロック・ナンバーや、リディアのある時はソウルフルなシャウト・ボーカル、ある時は表現力豊かなボーカルを中心に演奏されるソウルフルなナンバーなど、とてもクオリティの高いR&Bロック・アルバムとなっています。

特にホーンセクションの役割は大きく、上述のもう一つのベイエリアのファンク・グループ、タワー・オブ・パワーとかけもちでこのコールド・ブラッドのメンバーとなっているスキップ・メスキート(テナー・サックス&フルート)を中心としたタイトでファンキーなホーンセクションが、このアルバムのファンク・サイドのサウンドメイキングの重要な原動力となっています。

コールド・ブラッドは1969年に、当時の超大物ロック・イベント・プロモーターのビル・グラハムのオーディションでその実力が認められ、当時グラハムが所有していたサンフランシスコのライヴハウス、フィルモア・ウェストで活動、その人気を70年代前半にかけて高めていったバンド。ボーカルのリディアがそのソウルフルで力強さでジャニス・ジョプリンに比べられることが多かったのですが、その彼らをグラハムのオーディションに推したのは他ならぬジャニスだったといいますから、彼らの実力はミュージシャン達の間でも認められていたようです。

ジャケにリディアの写真を据えたデビュー作『Cold Blood』(1969)、バックに当時まだブレイク前のポインター・シスターズを従えた『Sisyphus』(1970)、そしてあのダニー・ハサウェイをプロデューサーに迎えた『First Taste Of Sin』(1972)に続けてリリースされたこの『Thriller!』は、それまで主としてメンバーによる作品に2曲程度のカバー曲を混ぜていた彼らのアルバムと異なり、前7曲のうち5曲が他のアーティストのカバー曲で占められているというある意味意欲作となっています。

アルバムの冒頭は、ジャニスの代表曲として有名な「Cry Baby」「Piece Of My Heart」といったR&Bナンバーの作者、ジェリー・ラゴヴォイのペンによる「Baby I Love You」。いきなりファンキーなカッティング・ギターにクラヴィネットが絡み、シンコペーションリズムでベースとドラムスが、いかにも70年代初期なファンキーさでなだれ込み、そこにリディアのシャウト気味のボーカルが乗ってくる、というご機嫌なファンク・ロック。曲の要所要所を締めるリズムのキメのフレーズが、タワー・オブ・パワーとかが好きな方であればとても気持ちいいはず。後半からはホーンセクションが曲の厚みを増してジャムセッション風に曲のグルーヴを加速していきます。

一転して2曲目はご存知スティーヴィー・ワンダーの「You Are The Sunshine Of My Life」。フェンダーローズのイントロで始まり、ほぼ8分にも及ぼうかという長尺のジャズ・フュージョン風演奏をバックに前の曲とうって変わって情感たっぷりに歌い上げるリディアのボーカルがこのバンドのまったく異なる表情を見せてくれます。今時ならプロトゥールズで修正されているであろう、時々ちょっとオフキーになる彼女のボーカルもご愛敬。

続いてA面の最後はレイ・チャールズが1971年のアルバム『Volcanic Action Of My Soul』でやっていた「Feel So Bad」のカバー。こちらもオルガンのリフとブレイクを組み合わせたファンク・グルーヴたっぷりの独特のリズムリフに乗って、リディアのソウルフルなボーカルが炸裂して、思わず「これ、ライヴで見たかった」と思わせてくれます。

Thriller (LP Back)

B面は何とザ・バンドStage Fright』(1970)からの「Sleeping」のカバーでスタート。こちらはシカゴBSTブラッド・スウェット&ティアーズ)か、というようなブラスロック的なイントロから、またもリディアの表現力豊かなボーカルで、ザ・バンドのオリジナルでは黄昏れた感じのバラード・ロックだったこの曲を、ゴスペルチックに盛り上げて聴かせてくれます。

続くはこのアルバム唯一彼らのオリジナル曲、トランペットのマックス・ハスケット作の「Live Your Dream」。こちらは四つ打ちウォーキング・シャッフルでちょっとニューオーリンズ風な、いかにもホーンプレイヤーが書いた曲らしく曲のドライヴをホーンがリードする楽しいナンバーです。バックを固めるのは2作目でもコラボしたポインター・シスターズ。彼女達はこのアルバムの出たわずか数ヶ月後に衝撃のデビューを飾ることになります。

そして3曲目は、何とボズ・スキャッグスの1969年のセカンド・アルバムから「I’ll Be Long Gone」のカバー。ボズのオリジナルもマッスル・ショールズで録音されたとてもソウルフルなナンバーでしたが、コールド・ブラッドのバージョンもゆったりとしたグルーヴを効かせた素晴らしい出来です。

アルバム最後を締めるのは、ビル・ウィザーズのオリジナルのファンキーな味わいそのままに、リディアのソウルフルボーカルの真骨頂が興奮を呼ぶ「Kissing My Love」。カッティング・ギターとクラヴィネットのファンキーなバッキングリフに絡むホーンセクションとリディアのボーカルが生み出すグルーヴとブレイクで終わるエンディングが、アルバムが終わった後もじわーっと余韻を残す出来になっています。

このアルバムの後、『Lydia』(1974)、『Lydia Pense And Cold Blood』(1976)と2枚のアルバムを残しながらいずれも商業的には振るわず、バンドは残念ながら70年代後半に一旦解散して80年代、リディアは子育てに専念。80年代後半に再結成し、地元サンフランシスコで地道なバンド活動を続けていましたが、1998年に古巣のフィルモア・ウェストにカムバック、以来3枚のアルバムと2枚のライヴ・アルバムをリリースしながら、何と今でもコールド・ブラッドとして活動しているようです。

リディアは御年68歳と、70年前半当時の若々しさは望むべくもありませんが、何だか今でもこういうファンキーなリズムとグルーヴに乗って、ソウルフルなボーカルを聴かせてくれていそうな気がします。

そのリディアが最も脂が乗っていたと思われるタイミングでリリースされたこのアルバム『Thriller!』、70年代R&Bやファンクがお好きな方であれば文句なくオススメできる快盤です。フェスとかに行くのもいいですが、蒸し暑い夏のお共にファンキーなロックはいかがですか?

 <チャートデータ>

ビルボード誌全米アルバム・チャート 最高位97位(1973.6.9付)

オフ会映像

ひたすら・・・歌い出しがタイトル!の全米トップ40ヒットを聴く飲み会

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