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新旧お宝アルバム!#60「Wildflower」The Avalanches (2016)

time 2016/10/10

2016.10.10

新旧お宝アルバム #60

WildflowerThe Avalanches (Modular / Astralwerks / XL, 2016)

ここのところ80年代ブラコンの名サウンドメイカーのカシーフホイットニー・ヒューストンYou Give Good Love」のプロデュースが有名)、そしてマイケルの「Off The Wall」「Thriller」、クインシー・ジョーンズThe Dude(愛のコリーダ)」などの楽曲提供・プロデュースで有名なロッド・テンパートンという80年代ブラコンシーンの代表選手達が相次いで他界、年初の70年代を代表するロックスターたちの他界に加え、2016年はいろんな意味で一時代が終わりを告げる年となってしまっています。改めて今年他界した偉大なミュージシャン達に心から哀悼の意を表します。

さて、今週の「新旧お宝アルバム!」は新作のご紹介。今回は、何と前のアルバムから16年ぶりにセカンド・アルバムを発表した、独自の音像イメージの世界を数々の遊び心満点のサンプリングとサウンド・コラージュとで表現しているオーストラリアはメルボルン出身の2人組、ロビー・チェイタートニー・ディブラッシによるジ・アヴァランチーズの『Wildflower』をご紹介します。

avalanches_wildflower

皆さんもご存知のようにヒップホップの世界では「サンプリング」という手法で、他の曲のフレーズやリズムトラックの一部をそのまま使ったり、あるいは歌い直し・弾き直しして使ったりして、メインのヒップホップ楽曲のグルーヴを強力にしたり、メイントラックやリズムパターンの一部としたりするのがもう随分とスタンダードになっています。

しかしこのジ・アヴァランチーズのやっているのは、単なるサンプリングに止まらず、様々な楽曲の一部を使って独特の音像イメージを持った新たな楽曲を構築しているという、何ともユニークな楽曲制作手法。その結果作品はヒップホップでもなければロックでもなく、とてもユニークなスタイルのポップ・ミュージック、と呼ぶのがふさわしいものになっています。

彼らが16年前にリリースしたファーストアルバム『Since I Left You』(2000)は当時としては前例のないこうした手法で一説によると3,500種類およぶサンプリングにより作られ、当時その完成度の高さでシーンの注目を集めたとのことですが(すみません、自分は不勉強にしてまだ聴いてないので近々ゲットします)、今回のアルバムはそれには及ばないものの充分匹敵する出来とのこと。

このアルバム全体を聴くと、アルバムの最初の数曲、冒頭の「The Leaves Were Falling」から5曲目の「Going Home」までは、それぞれの曲の最初と最後の数小節の音がまるで軽く耳をふさいだ状態で聴いているかのようにくぐもって聞こえるため、まるでそれぞれ全く音楽スタイルの異なる世界と世界の間をトンネルで通過していくような、そんなイメージを強く喚起する作りとなっています。

屋外のアンビアント・ノイズの短いイントロ「The Leaves Were Falling」に続いて、くぐもって聞こえる楽しくグルーヴィーな70年代ソウル・ダンス・チューンのフレーズ(70年代初頭のソウル・グループ、ハニー・コーンの全米No.1ヒット「Want Ads」のサンプリング)に、ティーンエイジャーの女の子と思われる微妙に音程のはずれたボーカルが奇妙なグルーヴを生み出してる「Because I’m Me」でまずは一気にレトロなソウルの世界に持って行かれます。曲の後半90年代に活躍したラップ・デュオ、キャンプ・ローの二人による軽快なラップの後、また曲がフェイドアウトしてくぐもった音になり、次の「Frankie Sinatra」へリスナーが「移動」する感覚。次に入る音像イメージの部屋では、今度は何やら異国風で古風なロシアのコサックのようなリズムに乗って老人っぽいボーカル(実はデトロイトのラッパー、ダニー・ブラウン)が、東欧民謡のようなメロディを歌うというもの。これはまた随分と趣向が変わったもんだな、と思っていると後半が突然ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の「私のお気に入り(My Favorite Things)」のストリングスによるメロディ(パーシー・フェイス楽団のサンプリング)が乗っ取ってしまうと言う、まあ何とハチャメチャな、それでいて思わず引き込まれてしまう構成。

またまた屋外のアンビエントノイズと、次の音像世界に移動する間のくぐもったサウンドで聞こえてくるのは何やらエレクトロニカっぽいサウンドによる夢見るようなダンス・チューン「Subways」。しかし時折入ってくるバックコーラスに耳をこらしてあれ?どこかで聴いたフレーズだな?と思うと、ドゥービーの「Black Water」の一節だったりと、ここでも遊び心満点のサンプリング・サウンドの万華鏡のような世界が。

こうして曲ごとに解説していくとキリがないのですが、この後も冒頭懐かしのクッキー・モンスターのクッキーをむさぼり食うサウンドで始まり、怪人ビズ・マーキーのラップをフィーチャーした「The Noisy Eater」ではバックの子供達のコーラスがよく聴くとビートルズの「Come Together」の一節を歌っていたり、「Livin’ Underwater (Is Somethin’ Wild)」ではあれ?このメロディ知ってる?と思うとポール・マッカートニーの「Uncle Albert / Admiral Halsey」の一節だったりなどなど、まあとにかくホントに一曲一曲楽曲スタイルも違うし、様々な音像をコラージュしたような音の万華鏡のような世界の連続なのですが、ひたすら楽しく、奇妙なグルーヴと統一感を醸し出しているのがすごいところ。圧倒の21曲で聴き終わった後はしばらくいくつかの楽曲のメロディが頭を離れないくらい、インパクトのあるアルバムなのです。(事実自分はしばらく「♫Aah~ Frankie Sinatra / Ahhh Frank Sinatra♫」という「Frankie Sinatra」の一節がしばらく頭の中を回ってました)

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既にこのアルバム、各音楽誌からは軒並み高い評価を得ており、年末の年間アルバムランキングではどこでもかなり高い位置を占めるのでないかと予想されますし、おそらくグラミーにも何らかの形でノミネートされることになるのではないかと思われます。それに比して、日本の音楽メディアではそれほど大々的には盛り上がっていないのが惜しいところ。

今年のフジロックにも来日するはずだったのですが、メンバーのトニーの健康状態の問題で直前にキャンセルになってしまいました。そうしたことも日本でまだまだ盛り上がりに欠ける一因かもしれません。

彼らによると、今回のアルバムに収録仕切れなかった作品が多数あり、今度は1年以内にまたアルバムを出す予定があるとのこと。それまでそれを楽しみにしながら、ジ・アヴァランチーズの目くるめくようなグルーヴィーで、ダンサブルで、ちょっと物哀しくて、そしてハッピーなサウンドスケープの世界をこのアルバムで満喫しませんか?

<チャートデータ>

ビルボード誌全米アルバム・チャート最高位27位(2016.7.30付)

同ロック・アルバム・チャート 最高位5位(2016.7.30付)

同オルタナティヴ・アルバム・チャート 最高位5位(2016.7.30付)

オフ会映像

ひたすら・・・歌い出しがタイトル!の全米トップ40ヒットを聴く飲み会

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