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新旧お宝アルバム!#71「Raintown」Deacon Blue (1987)

time 2017/01/09

2017.1.9

新旧お宝アルバム #71

RaintownDeacon Blue (Epic, 1987)

皆さんちょっと遅めですが、明けましておめでとうございます!いよいよ残念なニュースが続いた2016年も終わり、2017年のスタートです。既に仕事に勉強に、活動開始されていることと思います。今年も新旧取り混ぜて、ちょっと素敵な、カッコいい、そしてグルーヴィーな「お宝アルバム」を基本毎週お届けしていきますので、よろしくお付き合いください。

さて今年一発目の「新旧お宝アルバム!」は旧のアルバムのご紹介。今回はMTVとシンセ打ち込みにまみれて多くの音楽が今聴くと古びた感じがしてしまう80年代の音楽群の中で、UKから次々に出てきた米国音楽憧憬系の音楽をやるアーティストたちの一つ、ディーコン・ブルーのメジャーデビューアルバム『Raintown』(1987)をご紹介します。

raintown

1987年というと、ちょうどアナログレコードからCDへと、音楽メディアの主役が大きくシフトした年。洋楽の世界では先頃惜しくも他界したジョージ・マイケルの『Faith』、U2の『ヨシュア・トゥリー』、マイケル・ジャクソンの『BAD』、エディー・マーフィー主演のアクションコメディ映画『ベヴァリーヒルズ・コップ2』やサントラ盤が売れに売れた映画『ダーティ・ダンシング』などが大ヒットした年です。一方80年代前半のデュランデュラン、カルチャー・クラブ、ティアーズ・フォー・フィアーズといったUKのアーティスト達による、いわゆる「第二次ブリティッシュ・インヴェイジョン」が一段落して、音楽シーン全体がどことなく混沌とし始めた時期でもありました。個人的には、生まれて初めてアメリカの地に足を下ろしたのがこの年で、現地で見たものすごいスケールのハートのライヴ(彼らの「Alone」が1位になった年でした)に圧倒されたものです。

そんな状況の中、UKでは上記に挙げたUSでもメインストリームとして聴かれたアーティスト達と比べるとやや地味目の立ち位置やマーケットへのアプローチ手法の異なる、しかしUKアーティスト達に一貫してみられる米国音楽憧憬の姿勢はしっかり持った実力派のバンドがいくつも出始めていました。その中で、当初アンダーグラウンドのブルー・アイド・ソウル・バンドとして実力を重ねていきながら、1986年に「Holding Back The Years」で全米1位を取り、90年代前半にかけてUSでも大ブレイクしたシンプリー・レッドのようなバンドもあり、以前このブログでも取り上げたケイン・ギャングのような通好みの渋めのバンドもあり、このような実力派のバンドが輩出したのが80年代後半のUK音楽シーンの一つの特徴でした。

今日ご紹介するディーコン・ブルーもそうしたバンドの一つ。スコットランドはグラスゴー出身のリッキー・ロスロレイン・マッキントッシュの男女ツインボーカリスト、キーボードのジェイムス・プライム、ギターのグレアム・ケリングそしてドラムスのダギー・ヴァイポンドの5人によって1985年に結成されたバンド(1986年にベースのユーエン・ヴァーナルが加入)。グループ名を見て思わずニヤリとした方も多いでしょうが、あのスティーリー・ダンの名作アルバム『Aja(彩)』(1978)収録の曲のタイトルから取ったグループ名です。

deacon-blue

そのグループ名由来から察せられるように、メンバー達のペンによる楽曲は、R&Bの要素をベースにおいた、繊細なメロディと手堅い演奏と洒脱なアレンジ、そして澄み切ったグラスゴーの町の空を想起させるような映像的な音像による楽曲がほとんど。アメリカのバンドでいうとブルース・ホーンスビー&ザ・レンジあたりを思い出させますが、彼らがR&Bやアメリカ中西部のカントリーの要素を色濃く持ったスタイルであるのに対し、UKのバンドらしくより都会的な(それも地方都市の)雰囲気を感じさせるスタイルの楽曲を聴かせます。

タイトルの『Raintown』とは、ジャケットにも写真が使われている、グラスゴーの町を指しており、冒頭静かにピアノで始まる短い「Born In A Storm」に続いてなだれ込む二曲目のタイトルでもあります。この「Raintown」ではやや陰りのあるメロディとドラマティックなアレンジで、グラスゴーの町で思うような仕事が得られない不満をぶつけるような歌詞がリッキーロレインの絡み合うボーカルで歌われます。

同じく雨とグラスゴーの不景気さがモチーフの「Ragman」に続く「He Looks Like Spencer Tracy Now」は一転して、第二次世界大戦中広島と長崎に原爆を投下したエノラ・ゲイ号が発進したという、太平洋のテニアン島でのエノラ・ゲイ号操縦士の写真を題材として、その操縦士のその後のストーリーを淡々としたメロディに乗って語るという問題作。原爆を投下したハイド氏のような操縦士は、今やスペンサー・トレイシー(アメリカの1940年代の有名なハンサム男優)みたいに見えるが、毎日泣いている、という歌詞がことに日本人の我々の心には強く響きます。

そして人生は不公平なことばかりだけど、僕は愛を見つけて金持ちの君には分からない答えを得たのさ、とシニカルな歌詞をアップビートなポップなメロディで歌う「Loaded」、愛の申し出を断られるのを待つしかないという切ない歌詞が郷愁感満点のメロディで歌われる「When Will You (Make My Telephone Ring)」で全体的に陰りに満ちたレコードのA面が終わります。

レコードでいうとB面のスタートは、一転してカントリー・ロックっぽい演奏によるほの明るい曲調で、彼が触れると溶けてしまいそうな女の子の話を歌う「Chocolate Girl」でポジティヴにスタートしますが、失業やより良い状況を夢見るという歌詞の「Dignity」「The Very Thing」でまた陰りに満ちたテーマに戻ります。ただ、曲調はいずれも極めてポップでポジティヴであり、詞の内容に反して軽快で美しいメロディが、正にスティーリー・ダンのひねくれポップの世界を想起させます。

そしておそらくこのアルバムで最もエモーショナルな歌である「Love’s Great Fears」では、破綻しそうな愛を必死でつなぎ止めようとする男女の思いをリックロレインのボーカルが情感たっぷりに表現、曲の後半でその情感を盛り上げるようにゲストのクリス・リアによるスライド・ギターが鳴り響きます。

そしてラストには、アルバムを通じて語られてきた都市生活の不条理に対する怒りをぶつけるかのように「この町が悪いんだ」と訴える「Town To Be Blamed」で映画のエンディングを見るかのような音像の中、アルバムが完結します。

raintown-back

こう書いてくると何かとても暗い作品のように聞こえるかもしれませんが、再三いうように、楽曲の洗練された音像的表現力や、楽曲のポップさ、メロディの美しさといったものがこのアルバムを一級品のポップ・ロック作品にしていることは間違いありません。

彼らはこの作品のヒットで大きな評価を得た後リリースした『When The World Knows Your Name』(1989)が全英アルバムチャート1位を記録、シングルの「Real Gone Kid」が全英8位に上るヒットとなるなど、更に成功を収めましたが3枚目の『Whatever You Say, Say Nothing』(1993)発表後にドラムスのダギーの脱退を機に1994年に一旦解散。しかし1999年に行った再結成ライヴをきっかけに活動再開。現在もライヴ活動を続けながら、昨年2016年には9作目となる新作『Believers』をリリース、今でもその洗練されたポップ作品をファンに届け続けているようです。

年明け早々寒い日々が続いている2017年ですが、ディーコン・ブルーの都会的なサウンドを楽しみながら、暖かくしてお過ごしください。

 <チャートデータ> 全英アルバムチャート最高位14位(1988.8.13付)

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