ブラック・ミュージック

Vol.7 『Off The Wall』/Michael Jackson

2013-05-29

*Vol.7 『Off The Wall』/Michael Jackson

 Robin Thickeの新曲「Blurred Lines」feat. T.I. & Pharrellがやたらと気に入っている。Pharrellがかつて手掛けたJustin Timberlake「Rock Your Body」(03年5位)を彷彿とさせるディスコ・ソウルっぽさが充満するナイス・アップで、とにかく文句なしにご機嫌なことこの上ない。

 この曲の全編に敷かれている“ふお~”という合いの手が、Michael Jackson「Don’t Stop ‘Til You Get Enough」(79年1位)の冒頭で聴かれる“ふ~う”を想起させるのは、Pharrellの目論み通りかどうかはわからない(ついでに全編で敷かれるシンセ・パーカッションの音色も!)。

 ということでPharrellやロビンがモチーフとした「Don’t Stop ‘Til You Get Enough」を収録した、Michael Jacksonの最高傑作アルバム『Off The Wall』(79年)をピック・アップ!

 マイケルの最も売れたアルバム/最も有名なアルバムは『Thriller』(82年)であることは、もちろん誰も疑う余地はない。ではマイケルのアルバムで最も好きなのはどれ、という質問を投げかけると、多くのファンが『Off The Wall』と応えるのも事実だ。

 まず言えることは、『Off The Wall』が発売時点の79年における最上級のポップ・ソウル作品であるということ。そう、あくまでも『Thriller』や『Bad』(87年)は最上級のポップ作品であって、『Off The Wall』で醸し出される“ソウルの残り香”みたいなものは希薄であると言わざるを得ないのだ。この“ソウルっぽさ”のニュアンスは、主にマイケルの歌声/歌い方に起因するところが大きく、70年代までのマイケルは稀代のソウル・シンガーとしての力量を惜しげもなく披露していたし、送り手側の制作陣も基本的には“ソウル・ミュージック”(ポップな要素はあるにしても)を基盤に据えていたことは明らかだろう。Quincy Jonesとのタッグ以降、King Of Popたるメガ・スター化に拍車がかかるわけだが、『Off The Wall』というアルバムは、“ソウルっぽさ”の匂いとポップのスーパー・スター的なスタンスのちょうど過渡期的な時期であって、マイケルの歌声にギリギリ70年代的なソウル・シンガー然とした味わいが残っており、その辺の微妙な感触を感じ取った我々は、『Off The Wall』に大いなる魅力を見出しているのでは。要するに、マイケルがアンコンシャスに放つ“ソウルっぽさ”と、Quincy Jonesが創造する計算し尽されたポップ・ミュージックのひな形が、絶妙に同居したことによって生まれたケミストリーが、この時代ならではのワン・アンド・オンリーな輝きとなっている。『Thriller』以降のマイケルの歌唱において“ソウルっぽさ”の希薄は否めず、つくづく思うにこの絶妙さは『Off The Wall』だからこそなしえた奇跡と呼べるものなのだ!

 サウンド・プロデュースは前述通りQuincy Jones。Brothers Johnsonをスターダムに押し上げた実績を誇る彼のプロダクションに、まったく隙はない。そしてこのアルバムの楽曲は、とにかく駄曲がなく、マイケルはもとよりStevie Wonder、Louis Johnson(Brothers Johnson)、Paul McCartney、Carole Bayer Sager…珠玉かつ入魂の楽曲が揃う。中でも白眉はRod Temperton!クィンシーがHeatwaveから引き抜いたこの英白人の書いた「Off The Wall」、「Burn This Disco Out」は、ファンク/ディスコ/ポップ/ソウルの良さを一緒くたに混合した素晴らしい作品だ。「Off The Wall」に関しては、Heatwaveのヒット・ソング「Boogie Nights」(77年2位)の続編的味わいで、特にあのベース・ラインを耳にする度にぞくぞくしてしまう。

 最後にチャート的な話しを。『Off The Wall』からは4枚のシングルがカットされ、全てが「Hot 100」のトップ10入りを果たした。70年代までは、1枚のアルバムからカットされるシングルは多くてもせいぜい3曲という時代に、この実績はマイケルの人気の高さが尋常ではない証しでもある。綿密に調べたわけではないが、1枚のアルバムから4枚のシングルがすべてトップ40入りした初作品は、KC & The Sunshine Band『Part 3』(76年/「(Shake,Shake,Shake)Shake Your Booty」1位、「I Like To Do It」37位、「I’m Your Boogie Man」1位、「Keep It Comin’ Love」2位~ついでに「Wrap Your Arms Around Me」48位)で、4枚のシングルがすべてトップ10入りした初作品は、Fleetwood Mac『Rumours』(77年/「Go Your Own Way」10位、「Dreams」1位、「Don’t Stop」3位、「You Make Loving Fun」9位)だった。なので『Off The Wall』は、1枚のアルバムから4曲のトップ10シングルを生んだ2例目となっている。もちろんこの記録は『Thriller』(7枚のシングルがすべてトップ10入り)、『Bad』(7枚のシングルのうち6枚がトップ10入り)でもって、自らが破ったのだが。

 

<チャート・データ>

アルバム『Off The Wall』80年3位

シングル「Don’t Stop ‘Til You Get Enough」79年1位/ブラック1位/ディスコ2位

    「Rock With You」80年1位/ブラック1位/ディスコ2位

    「Off The Wall」80年10位/ブラック5位

    「She’s Out Of My Life」80年10位/ブラック43位


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