Vol.8『Live At The London Palladium』/Marvin Gaye

ブラック・ミュージック

*Vol.8『Live At The London Palladium』/Marvin Gaye

Robin Thicke feat. T.I.+Pharrell「Blurred Lines」が「Hot 100」を独走中だ(7/15現在5週連続1位!)。往年のディスコ・サウンドを彷彿とさせる感触が実に心地好い「Blurred Lines」だが、Michael Jackson「Don’t Stop ‘Til You Get Enough」(79年1位)を想起させる掛け声がフィーチャーされていたりして、よく耳を傾けてみると、様々なディスコ・ヒットのモチーフが聴こえてくるようで面白い。そんなモチーフの1曲として挙げられるのが、あの独特なパーカッションから想起される「Got To Give It Up(Part I)」(77年1位)!もちろんMarvin Gayeが歌った、堂々の全米ナンバー・ワン・ソングだ。

「Got To Give It Up(Part I)」(邦題:黒い夜)が収録されたアルバムは、マーヴィンにとって生前最後のライヴ・アルバムとなった『Live At The London Palladium』(77年)だった。アナログLPで言うと2枚組、A、B、Cの3面がライヴ音源、D面が新曲としての「Got To Give It Up(Part I)」という構成。これは翌78年Donna Summerの大ヒットアルバム『Live & More』と同じ構成で、アルバムの1面すべてを使用してまるまる新曲1曲で占めるという(ドナの場合は「MacArthur Park」~「Heaven Knows」等の組曲だったが)、いかにもディスコ隆盛の時代ならではという感じだ。それにしてもこのマーヴィンのアルバムは、11分48秒に及ぶ「Got To Give It Up(Part I)」が圧巻過ぎる。前年リリースした『I Want You』が、性愛路線真っ只中という感触で、「Got To Give It Up(Part I)」はそれを継承したという捉え方もできるかとは思うが、時代の潮流を見据えたディスコ路線を強めたことは明らか。ただしファルセット一辺倒で押し通したこの曲に関しては、そんじょそこらのB級ディスコとは一線を画し、実にファンキー&ソウルフル!この時代のマーヴィンだからこそが醸し出せた、ブラックネス溢れる超一級のディスコ・ソウルに仕上がっている。よくよく考えてみたら、ディスコ隆盛の70年代後半に、明らかにディスコを意識したマーヴィン・レパートリーって、ほぼこの曲だけだったりするのだが(「I Want You」がちょっと近いけど)、ここはさすがマーヴィン!だよね。当時の「黒い夜」という邦題が、もしかしたらかなり言い得て妙、なのかも!?そして「Got To Give It Up(Part I)」を聴けば聴くほどに、77~79年時期のマーヴィンにもっとディスコ・ソウル路線の曲を歌ってほしかった…。超絶ファンキーな楽曲ができただろうな、と想像してしまうんだなあ。もちろん最早叶わぬ夢だし、こういう想像はキリがありません。それだけ「Got To Give It Up(Part I)」の衝撃が強かったのかもしれない…。

ライヴ内容に関しては、A 面:70年代前半、B面:60年代ヒット・メドレー&70年代前半ヒット・メドレー、C面:デュエット・ヒット・メドレー、というもので、当然超一級ソウル・シンガーとしてのマーヴィンの歌声が堪能できる。スタジオ録音の新曲の印象が強すぎる、ライヴ名盤!

 

<チャート・データ>

アルバム『Live At The London Palladium』77年3位

シングル「Got To Give It Up(Part I)」77年1位