*Vol.4-2/2 『III」/Gap Band

 (前回からの続き)

Gap Bandは既に74年にはアルバム・デビューを果たしていたけど、いわゆる80年代型の“ファンク”に傾倒していくのが70年代後半から。メジャー配給のアルバム『Gap Band』(79年)からの「Shake」、続く『II』(79年)からの「Steppin’」「I Don’t Believe You Want To Get Up And Dance(Oops、Upside Your Head)」といった目の覚めるような激へヴィ・ファンク曲をドロップ、ヒットさせていく。特に「Oops,Upside Your Head」は、全面降伏せざるを得ないメガトン級パンチ!全編を貫く煌びやかなシンセ・ハンド・クラップと重低音ベースを軸にしたこの骨太な長尺ファンク・トラックは、まさに80年代ファンクの夜明けを高らかに宣言するに相応しいアンセムと化した。エレクトロ・ヒップホップ風な間奏のキーボードも効果的、全編ラップ風歌唱と“へへっ”のしゃくりあげ合いの手のみに終始するチャーリーのヴォーカルにKOされない人はいないのでは。96年にSnoop Doggy Dogg(当時の名称)が「Snoop’s Up Side Ya Head」として本家チャーリーを迎えてリメイクしたのも大いに頷けるってものだ。いずれにしろこの曲のヒットで(80年ブラック4位)、ファンクなGap Bandのイメージは決定的となった。

 そんな新たなファンクの旗手として期待されていた中でリリースされたのが、この『III』(80年)というわけだ。アルバムに先駆けてリリースされたシングル「Burn Rubber(Why You Wanna Hurt Me)」(81年84位/ブラック1位)、これこそが80年代ファンク群の中でも金字塔のごとく輝く永遠のフロア・アンセムとして踊り継がれている超へヴィ・パンチだった!何度この曲で踊ったことか!何度この曲をDJプレイしたことか!何度この曲でフロア内昇天したことか!(笑)

当時も今も、この曲を耳にする瞬間脳内アドレナリンが洪水のように押し寄せ、到底冷静に聴くことのできない楽曲のひとつだ。車のエンジン音~急発進タイヤSE~うねるシンセ・ベース~ハンド・クラップ風シンセ…計40秒弱の完璧なイントロ、ここだけで昇天確実。楽曲自体も、あくまでも重心の低いへヴィネスを前面に押し出して、人力によるトラックを基本に敷きながら、シンセ・ハンド・クラップを打ち込み風に聴かせるという典型的80’sファンクを見事に体現。本当に何度聴いても我を忘れてしまう。チャーリーの歌声も、終始スティーヴィー・スタイルが炸裂!特にサビにおける抑え気味の低音シャウトなんぞは、スティーヴィー本人がのり移ったのではと思わせるほど。

いずれにせよGap Bandは、この奇跡的名曲をもってして、この時点での初の「Hot 100」エントリー、及びブラック・シングル制覇を果たしたのだ。

そんな昇り調子モードなGap Bandにとって、アルバムからのセカンド・シングル「Yearning For Your Love」が、さらなる高みへと導くことになる。怒涛のファンク攻勢直後に放たれたシングルが、超弩級メロウ楽曲!しかも並大抵のメロウ曲じゃない。超がつくほどの普遍的メロディを擁する、高い次元で語るべきメロウ・スロウ名曲だったりする。当時のファンク・バンドのアルバムには、必ず1~2曲は耳を奪われるようなスロウ・バラッドが収録されていたものだが、この曲はそういったスロウ曲の中でも、永遠に色褪せない何かを持っている素晴らしい作品だと断言してしまいたい。事実「Hot 100」においてGap Band史上最高位を更新(81年60位、ブラック・シングルは5位)、この曲がブラック層のみならず広く全米の人々への間口を広げるような突破口の役目を果たしたことがわかる。さらに90年代に入ってからサンプリング・ソースとして重宝されたことも、何をかいわんやという感じだ。ただしサンプリング・ソースという意味では、次のアルバム『IV』(82年)収録の「Outstanding」の使用頻度には及ばないのだが。

本アルバムからのもうひとつのシングルが「Humpin’」で、これがまた80年代ファンクを立派に体現した楽曲のひとつで、ある意味「Burn Rubber」以上にドス黒い世界が広がる、激へヴィなクール・ファンクに仕上げている。

さらに収録曲「Gash Gash Gash」!早回し人声SE共々Pファンクの匂いを漂わせながら、ひたすら反復の美学から生まれるファンクネスに拘った、これまた真っ黒けな怒涛のファスト・ファンク。アルバム全体の充実度を鑑みれば、まさしくこの頃のGap Bandは、手の付けようがないくらいに突っ走っていたし、大衆感を携えた黒いファンクネスを体現することに関しては、他の追随を許していなかった。

セールス的には「Early In The Morning」「You Dropped A Bomb On Me」という2大トップ40ヒットを放った次作『IV』には及ばないものの、『III』も実はミリオン・ヒットを記録。80年代ファンクの理想形が詰まった本作をもってして、Gap Band(及びチャーリー・ウィルソン)はアフリカン・アメリカンのヒーローになったのでした。